弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2012年12月 9日

北斎

社会

著者   大久保 純一 、 出版    岩波新書 

 カラー版の楽しい新書です。新書ながらも、浮世絵の素晴らしさをしっかり堪能することができました。さすがは北斎です。すばらしい絵に目を見張るばかりです。
 1988年、アメリカのグラフ誌『ライフ』が世界の人物100人をあげたうち、日本人では北斎がただ一人上げられていた。
北斎は、めまぐるしく画号を変えた。93度にも及ぶ異常なまでの転居癖。
 浮世絵風景画の代表作は「富嶽三十六景」。絵手本の代表作「北斎漫画」。この「漫画」は現代のコミックとはまったく異なるもの。
 浮世絵で、両国の花火大会を描いた絵は、その大きな構図といい群衆場面といい、さすが描写が驚嘆するほど細かい。
ヨーロッパ彫刻画(エッチング)の影響もあります。いいものは、すばやく取り入れたようです。「富嶽三十六景」の富士山を大波が襲いかかろうとする構図の大胆さには胆を抜かれます。また、あざやかなブルーを使った海洋図も、すごい迫力です。ベロ藍というそうです。
 浮世絵の到達した境地は、世界中に響きわたったのでした。
(2012年5月刊。1000円+税)

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー