弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2012年12月 8日

アフリカの風に吹かれて

アフリカ

著者   藤沢 伸子 、 出版   原書房 

 なんだか気楽なタイトルですが、読みはじめると、アフリカ大陸の国々は依然として深刻な状況におかれていることがよく伝わってきます。そして厳しい自然と社会環境のなかでも日本人女性がたくましく活動しているのです。それを知ると、頭が下がります。
スーダンという国は南と北で人々が違うというのをはじめて知りました。南スーダン人は肌がとても黒く、顔も北部の人々にくらべると平面的。それに比して、北スーダン人はアラブ系で彫りが深く褐色の肌の色をしている。
 アフリカの女性は、髪のオシャレにこだわりがある。しかし、髪型にこれるというのも経済力のあかしだ。
 南スーダンの多くの家庭では男の子に教育の機会を与えても、女の子の教育にはまったく力を入れない。小学校を卒業した女性は1%ほどしかいない。女性が教育を受けられない理由のひとつに早婚の習慣がある。場合によっては、わずか7、8歳でヨメに行かされることもあるし、生まれたばかりの乳児が婚約させられることもある。
結婚しないで女性が一人で生きていこうとすると、所得者がいないから好きに扱っていいと思われて、レイプの被害にあう危険がある。うひゃあ、それは困りますね・・・。
日本のJICAが地域改善活動でボランティアを募集すると、活動に参加していると、この先、日本人が何か職をあてがってくれるかもしれないという根拠のない、しかし切実な期待をもつ人々が集まってくる。なーるほど、難しいところですね。
どれほど目的が崇高でも、手段を間違えると、マイナスの影響のほうが大きくなることがある。信頼してまかせきっていた人間に手ひどく裏切られるというのは、アフリカで仕事をしていくうえでの、一種の通過儀礼のようなものである。
 サンビアでは全国民の5人に1人がHIVに感染し、多くの人が家族や友人を亡くし、また自らも感染の恐怖におびえている。
 日本のNGO団体が、日本人ではなく途上国出身の医師を派遣する理由は、人件費が安いこともあるが、施設や機材のととのった病院勤務に慣れた先進国出身の医師では、限られた条件の環境で聴診器と血圧計のみで診察するのは厳しいことがあるからだ。
 エチオピア人は、もともと勤勉でアフリカで唯一独自の文字を持つ国民としての誇りをもっている。
 ここで働いていると、いつのまにか難民を厄介な人々の集団としてしか見られなくなる。彼らのやむことのない要求や不満にうんざりもする。でも、そのなかには、こたえてあげなければいけない、まっとうなものだっていくつもある。
 アフリカのなかでの活動というのは、まさに自らの人間性をためされ、生きる目的を考えさせられるものだということがよく分かる本です。
(2012年7月刊。1800円+税)

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