弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2012年10月 5日

マインド・コントロール

社会

著者   紅藤 正樹 、 出版    アスコム 

 今もオウム真理教の信者が全国に1500人もいるそうです。信じられない現実です。出家(専業)信者400人、存家信者1100人です。そして、あの死刑囚の麻原を今も教祖としてあがめているというのですから、世の中は一体どうなっているのかと、歯がゆい思いがつのります。これは、橋下現象なんていう浮ついたブームが起きるのと本質的に同じことなんでしょうね。当の本人たちは深く考えているつもりでも、実は肝心の足元をしっかり見ていなくて、流されるままだということでしょう。
 「依存心」は、マインド・コントロール状態に置かれた人の心理状態において、もっとも重要な要素の一つである。
 マインド・コントロールを施されると、以前にも増して活発になる場合の方がむしろ普通である。
 マインド・コントロールは強迫な手法なので、強迫に耐えきれなくなると、被害者がパニック障害を発症したり、うつ病を発症したりするケースがある。
 マインド・コントロールされた人を取り戻すとき、司法手続や警察に頼るだけではほとんど効果がない。脱会は心の問題なので、脱会カウンセラーの意見を聞くことと並行してすすめる必要がある。
中途半端な方法を親がやればやるほど、かえって親に対する憎悪心がふくらみ、親との断絶がすすんでしまう。
脱会後、精神的に急激に落ち込んだり自己嫌悪に陥ったりしてしまうことがある。精神的な高揚感そのものが、精神を強く抑圧するマインド・コントロールの後遺症なのだ。抜け出そうとして再び精神的な高揚感を求めて、新たな信教にはいることも珍しくはない。
だから、きちんと話しのできる人によるカウンセリングを受ける必要がある。
脱会させても、場所の次に心を引き離すプロセスが重要。戻ってきて、「もう大丈夫」と判断してカウンセラーや弁護士の世話になる必要もないと思うと、かえって失敗してしまうケースが少なくない。本当に立ち直るまで、最低でも1~2ヵ月、場合によっては何年もかかることがある。
日本は、カルトの世界的な穴場であり、カルトの世界的な吹きだまりになっている。日本は、カルトに対して、もっとも甘い。だから統一協会がもっとも繁栄することができた。
カルトにはまった子どもを前にして、親は子どもをほとんど説得できないものだ。自分がいちばん知っているという発想自体が、子どもに対する強引な押しつけなので、親との関係は悪化し、子どもは元のカルトに戻ってしまう。
マインド・コントロールは、ある日突然、パッと解けるもの。ただし、脱マインド・コントロールは、元の人格に戻すという変化をもたらすだけのこと。たとえば、優柔不断な性格の人は、元の優柔不断な性格に戻るだけ。だから、カルトから抜け出しても、社会に出ると、自分の努力が大切なのだ。
 フランスには、「無知・脆弱(ぜいじゃく)性不法利用罪」というものがあって、マインド・コントロールするものは3年の拘禁刑と37万5千ユーロの罰金に処せられる。
 統一協会は、その教祖(文鮮明)と本体の組織が日本で逮捕・処罰されたことがないそうです。驚きます。しかし、日本でも、フランスにらなった法律を検討すべきだという気がします。いかがでしょうか・・・?
(2012年6月刊。952円+税)

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