弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2012年10月 2日

政府は必ず嘘をつく

アメリカ

著者   堤 未果 、 出版   角川SSC新書  

 アメリカって国は、とんでもない偏見にみちた国だと思います。なにしろ、国民皆保険を志向する人を「アカ」だなんていう、とんでもないレッテルを貼ってしまうのですから、始末が悪い。病気になったとき、大金持ちは救われても、そうでない人は野垂れ死にして当然だなんて、とんでもないことでしょう。ところが、それでいいのだと、大金持ちならぬ貧乏人が大きく手を叩いて支持するのです。なんという矛盾でしょうか・・・。
 アメリカで、がんは医療費が高すぎて、ほとんどの保険でカバーされていない。肺がんは手術代だけで1000万円をこえてしまう。
 うへーっ、1000万円だなんて・・・。医療費債務のために自己破産したというのは20年以上も前から聞いていましたが、ますます深刻になっているようです。
 2011年のイラク戦争は、アメリカ政府とマスコミが始めた戦争だ。2011年11月の終了宣言までに1兆ドルの税金をつぎこみ、のべ150万人が派兵された。4500人の戦死者と3万2200人の戦傷者を出した。帰還兵の2人に1人は脳障害や被曝に苦しみ、過半数を占める385万人が、今なお仕事に就けないでいる。
 イラク国内では100万人が死亡し、470万人が難民となった。
 国際機関IAEAは、原発推進、放射線利用の促進、核拡散分野での査察の3分野がある。その主目的は原発推進にある。
 日本の五大新聞はそろって、TPP推進という社説を書いた。人間の歴史をふり返ると、ファシズムをもっとも強力に生み育てるのは、いつだって大衆の無知と無関心だ。
答案用紙に正しい回答を書く能力は高くとも、批判的志向をせず、理不尽な権力に対して抗議せず、物事に対して好奇心や疑問を持たないロボットのような子どもたちが大量に生み出される社会。民主国家に不可欠の「市民」を育てる場所であるはずの教育現場が、市場原理を効率よくまわすための「従順な国民」をつくっていく。
テレビをみていると、人間の脳波は動きが鈍くなり、ある種の睡眠状態になる。冷静、客観的にものを考えることが難しくなる。その結果、人々は無意識に分断されていく。
 フェイスブックもツイッターも民間企業が運営している政策内容をぼかすという重要なステップは、ワンフレーズとセットでやってくる。
 アメリカでは、医療保険がないため4万人の患者が死に、保険がありながら100万人の被保険者が破産し、薬の副作用で30万人が生命を落としている。
 アメリカの危険な現実をつきつける本でした。
(2012年3月刊。780円+税)

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