弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2012年9月 4日

原発民衆法廷①②

社会

著者  原発を問う民衆法廷実行委員会 、 出版  三一書房 

 昨年の3.11福島第一原発事故は決して天災ではなく明らかに人災でした。ですから、東電の会長そして社長に厳しく刑事責任が問われるべきです。
 検察庁も告訴、告発を受理したと報道されています。
 私個人は前から死刑廃止に賛成なのですが、東電の会長・社長が死刑にならないというのなら(これは必ず死刑にしろということでは決してありません。念のため)、日本の死刑制度なんて直ちに廃止したほうがいいと思います。
 人間一人を残虐な方法で殺して死刑に処せられるというのなら、東電の会長・社長のように、お金のために単なる一私企業が日本という国を全体として住めなくしようとしたわけですから、当然、何万回と死刑宣告があって然るべきでしょう。
 東京・首都圏に日本人が住めないかもしれなかった大惨事を引き起こしておきながら、当時の会長・社長が今なおのうのうと贅沢ざんまいに明け暮れているなんて、あまりにも許しがたいことです。
 もちろん私は、東電の幹部だけを責めるつもりはありません。財界・政府そしてアカデミーの「原子力村」と呼ばれる人々の責任も厳しく弾効したいと思います。でも、なんといっても、そのためには当時の東電の会長・社長の刑事責任を問うことが先決だと思うのです。
 この本は、原発事故についての刑事責任を追及しようという画期的な取り組みを報告したものです。先駆的偉業に私は心から拍手を送りたいと思います。騙した側に責任はあるけれど、騙された市民の責任も大きいのではないかという冷笑的な指摘があります。これについて、高橋拓哉・東大教授は次のように述べています。
 騙された側にも責任はある。しかし、騙した側には最大の責任がある。騙されていたものが騙されていたことに気がついたら、騙した側の責任を追及するのは、まったく当然のこと。
 今回の3.11原発事故について原発推進を黙認してきてしまったという責任が市民にあるとするならば、むしろ、このような事故を二度と繰り返さないために、市民は、刑事的責任の所在追及する責任がある。
私は、このような高橋教授の指摘にまったく同感です。
 大飯原発の3号機が1機稼働するだけで、関西電力は、1日24時間で5億円、1月30日で150億円、1年12ヵ月で1800億円もの電気料金を得ることになる。ところが、大飯3号機が1日稼働しただけで、広島原発3発分の死の灰が生成される。さらに、普通の海水温度よりも7度も高いし、温水廃水が何十トンも1秒間に吐き出される。
原発に頼るしかないと、まだ多くの国民は信じこまされています。でも、首相官邸の周囲に毎週金曜日の夜に集まっている何万人という市民は、それは完全な嘘だと見破っています。一刻も早く、原発推進勢力の言っているのは真っ赤な嘘だと認識する国民を増やしましょう。
 また、そうでないと、なんのために辛抱して猛暑のなかを原発にたよらないでがんばったのか分かりませんよね。原発なんてなくても、立派に日本の経済が成り立つことをこの夏実証し、体験したわけですから・・・。
(2012年6月刊。1000円+税)

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