弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2012年8月 3日

社会の真実の見つけかた

アメリカ

著者   堤 未果、 出版   岩波ジュニア新書  

 日本がアメリカのような国になってはいけないと改めて強く思わせる本でした。アメリカン・ドリームなんて、年収1億円とか金融資産が1億円以上の人だけに縁がある世界なんですよね。多くのアメリカ人、そして大多数の日本人は地に足のつかない夢をみて、いつまでもアメリカに幻想をいだいているように見えます。私はとっくにアメリカを見限りました。だから、私はフランス語を勉強しています。
 アメリカには、日本のような皆保険制度はない。65歳以上の高齢者と低所得層だけが公的保障を受け、その他の国民はみな自己責任で民間の医療保険に入らなければならない。加入しても、患者と医師とのあいだに医療保険会社という中間業者が入るため、生命よりも利益が最優先されるしくみだ。
医師や病院は保険加入者を自分たちの病院に患者として回してもらう代わりに、医療保険会社から人件費削減や診療時間短縮をして利益を上げるように、いろいろ指示される。
患者が診療を受けられるのは医療保険会社のリストの載っている医師のみで、高い保険料を払っても、いざ治療を受けたあとで保険金を請求すると、保険会社に支払いを渋られ、払い切れずに破産するケースがとても多い。アメリカの自己破産の理由ナンバーワンは医療費である。
落ちこぼれゼロ法(2002年)は、生徒の成績が悪ければ教師は降格やクビで、学校への助成金は削減する。その後も、成績が上がらなければ、助成金を全部カットして学校自体を廃校にする。
学資ローンは4年生大学では平均3万ドル、修士なら12万ドル、医学部なら15万ドルの借金となる。卒業と同時に、若者の肩にのしかかる。家を手放せば借金が消える住宅ローンとは違い、学資ローンには消費者保護法がきかない。
 2008年、帰還兵の3割がPTSDや脳損傷に苦しんでいる。30万人が重度のうつ病である。帰還兵の自殺者がイラク・アフガニスタンでの戦死者数を上回っている事実が公表された。
 アメリカの肥満児を生み出す原因は、貧困、親の栄養知識のなさ、そして運動不足である。
教師の2人に1人は5年以内に辞める。かつて、教師は、女性にとってあこがれの職業ナンバーワンだった。今は違う。落ちこぼれゼロ法、そして、親の理不尽な要求が教師を辞めさせている。子どもは、親と学校、そして地域社会という三つの手によって育てられてきた。この三つのどれが欠けても、子どもは不安定になる。しかし、今のアメリカでは、この三つとも崩れかけている。親と教師、地域社会がばらばらに分断されている環境で、一番不幸になるのは子どもたちだ。
 いま、大阪の橋下「教育改革」がアメリカのまねをしようとしています。でも、アメリカでは失敗したとされているのです。教師を「敵」とするような「教育改革」によって子どもたちが本当に幸せになれるはずがありませんよ。
 それにしても、NHKをふくめて日本のオール・マスコミが橋下、維新の会をあんなに天まで高く持ち上げるのは、あまりに異常です。もういいかげんやめてほしいと切に思います。小泉「改革」の失敗を繰り返したくありません。
(2012年4月刊。820円+税)

 脱原発の声をあげながら首相官邸のまわりを取り巻く市民が増えています。私も近くだったら、ぜひ参加したいです。
 初めは数百人から始まったのが、今では10万人、20万人という規模になりました。鳩山さん(元首相)も参加したようです。
 でも、マスコミの扱いが小さいですよね。とくにNHKなんて無視そのものです。マスコミは、財界と同じで脱原発に流れが怖いのでしょうね。日本経団連の会長が脱原発なんてとんでもないと公言しています。まるで、お金の亡者ですね。お金より生命ですよね。

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