弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2012年7月 5日

弁護士道の実践

司法

著者   鈴木 繁次 、 出版   民事法研究会

 昔なつかしい大恩ある先輩弁護士の本です。新聞広告で知って、すぐに注文しました。この本の印税は、全額、東日本大震災の義援金として寄付しますと書かれているのを読んで、さすがと思い、昔のまま変わりない先輩の存在を改めて認識しました。
 私が著者にお世話になったのは、弁護士になりたてで、横浜(川崎)にいたころのことです。私はまだ20歳台でしたから、まさに生意気ざかりの年頃でした。裁判官出身で、キリスト教徒の著者は、血気盛んな私たちとともに公害問題の現地調査の出かけ、また、公害裁判に取り組まれたのでした。
 この本にも、横浜弁護士会の公害対策委員会の活動が紹介されています。京浜工業地帯である川崎の大気汚染公害に取り組んだのでした。このころ、横浜弁護士会は全国の公害委員会の活動をリードしていたと書かれていますが、本当にそのとおりであり、私も末席を汚していたのでした。福岡に戻ってきたとき、ひどい落差があるのを実感しました。
 著者が働き盛りのときの一日のスケジュールは次のようなものでした。
 朝9時までに事務所に出勤する。夕方5時ころまでは来客、電話の応対、弁護士会の委員会に出席する。それまでは落ち着いて書類がきはできない。5時以降に書類作成に入り、6時から7時に軽い外食をして、9時から10時まで事務所で書類がきと調べものをして帰宅する。その後、自宅で夜食をとる。だから、どうしても栄養過多になって、太ってしまった。
 うへーっ、夕食と夜食と2回も食べるなんて、それはいけませんね。私は夜8時までは食べずに我慢しています。それでも太ってしまうのですが・・・・(現在の体重66キロ)。
 著者が私と決定的に違うのは、8つもの「学会」に加入していることです。実は、私もそのうちの2つには加入しているので、残る6つが違います。日本私法学会、日本民事訴訟法学会、日本交通法学会、日本土地法学会、日本マンション学会、日本賠償学会です。すごいですね。著者が、いかに勉強熱心なのかがよく分かります。
 さらに私との違いできわめつけは、司法試験委員、それも民法の委員になったということです。私なんか、恐れおおくて、とてもこの委員にはなれません。毎年、5~600通の答案を採点しておられたようで、頭が下がります。
 優良答案が5%、不良答案が10%、あとは内容のあまり変わらない紙一重のものばかり。大変ですよね、公平に採点するって・・・・。
 著者は、昔から毎年合格者を100人ずつ増やしていたらよかったんだという意見です。
これには私もまったく大賛成です。今のように一気に2000人に増やしてしまったから、ひずみが生まれたのです。ですから、逆に合格者を減らせという動きに著者は懐疑的ですし、私も同じ気持ちです。
 裁判官から弁護士になり、法科大学院の教授にもなった著者は、弁護士会の会長にだけはなりそこなったそうです。これもケンカしたくない著者の温和な人柄によるものでした。ますますのご健勝を心より祈念します。
(2012年5月刊。952円+税)

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