弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2012年5月31日

原発と権力

社会

著者   山岡 淳一郎 、 出版   ちくま新書

 日本の原子力発電の第一「功労者」は今も生きている中曽根康弘である。そして、これを事業化したのは、CIAのエージェント(暗号名はポダム)だった正力松太郎である。正力松太郎は、犬猿の仲だった朝日新聞出身の緒方竹虎を妬んでいた。
 緒方もCIAの情報源だったが、急死してしまった。
 ただ、当時のCIAは秘密組織ではなく、緒方も自覚的なスパイではなかった。正力松太郎は総理になるべく、先行投資として2000万円という大金を三木武吉に渡した。今日のお金では3億から4億円になる。
 1955年11~12月、日比谷公園2000坪をつかって原子力平和利用博覧会が催された。42日間に総入場者は36万人をこえ、大盛況だった。CIAと正力松太郎の共同作戦の成果である。正力は、このとき展示されていた小型の原子炉を持ち帰って家庭用の発電につかうとアメリカ側に申し出た。もちろんそんなことは不可能。それほど正力は原子力について技術的にまったく無知だった。
 CIAは、やがて強引で唯我独尊の正力松太郎に手を焼き、アメリカの国益の観点から正力を危険視するようになった。
「原子力エネルギーについての日本の申出を受け入れると、必然的に日本に原子爆弾を所有させることになる。これは、トラブルメーカーとしての潜在能力においてだけだとしても日本を世界列強のなかでも第一級の国家にする道具となりうる」
 田中角栄は中曽根康弘と同い年。大臣になったのは中曽根より2年早い。
 「今太閣」ともてはやされた田中角栄が政権の座を追われた裏には、石油やウランを牛耳る欧米の資源帝国との激闘があった。田中角栄は、「世界の核燃料体制は、やはりアメリカが支配している。そこをフランスと一緒になってやろうとしたら、うしろからいきなりドーンとやられたようなものだ」と語った。
 与謝野馨は、いわゆる原子力村の出身者である。1963年に東大を出て日本原子力発電に入社した。原発推進の信念を変えていない。前原誠司もタカ派で、原子力推進派である。
メディアの原発・電力批判を抑えこんだのは、莫大な広告費だ。電力会社の広告宣伝費は900億円に近い。このほか販売促進費が
600億円を上回る。東京電力のみで、広告宣伝費が250億円ほど、普及費が200億円。
 これではメディアが電力会社の言いなりになって、原発を美化し、推進するはずです。メシのためには、黙って・・・、ということですね。
 民主党内の原発推進の中心が仙谷由人。つい先日、仙石由人は、「脱原発は日本にとって自殺行為」だなんて、とんでもないことを公言しました。反対に原発依存こそ日本人の自殺行為ではありませんか。いったい、使用ずみ核燃料はどう処理するというのですか。また、福島第一原発でメルトダウン、メルトスルーした核燃料の始末は、いつ、どこで、どうやって、誰がするというのでしょうか。仙谷大先生におたずねしたいと思います。
(2011年9月刊。760円+税)

 今年もホタルが飛びかう季節になりました。わが家から歩いて5分あまりの小川にそってたくさんのホタルが飛んでいます。あのふうわりふうわりとした飛びかたに心が魅かれます。飛んでいるホタルを両手でぞっと包んで、手のひらに乗せます。重さは感じません。ホタルはあわてず、あせらずじっとしています。軽く息を吹きかけると、再びふうわりふうわり、ゆっくり空中に飛びまわります。この眺めはいいものですよ。

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