弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2012年5月 9日

自治体ポピュリズムを問う

社会

著者   榊原 秀訓 、 出版   自治体研究社

 橋下流の「独裁政治」をマスコミが手放しでもてはやす昨今です。このブームは、いつになったら冷めるのでしょうか・・・。
 橋下への支持は、「何が変わるかが分からない」が、「バッシングにも負けず」に「庶民目線でメディアに発信を続ける」橋下がもたらす「何かの盛り上がり」への漠然とした期待で成り立っている。
 プレビシットという手法である。行政府の長が、選挙や国民投票など有権者の意思表明の機会を自分への信任投票と位置づけ、その結果を自身への「民意」の支持と見なそうとする政治手法のこと。必ずしも必要のない辞職で選挙を設定し、自己の政権基盤強化のために用いるのは、ポピュリズム政治家の本領発揮である。
 今日のポピュリズム首長は、自己の政治的地位の強化と政策の正当化のために意図的に議会を挑発し、意図的に対立構造をフレームアップしている側面のある点で、「革新首長」や「単一イシュー型首長」とは異なる。既存の議会内会派を基盤とする与党形成を追及せず、逆に、これらの諸会派を「敵」と位置づけ、自ら主導する地域政党によって議会内の多数派形成を目ざすという点では、自民・公明を基盤とする石原慎太郎都知事の政治手法とも異なる。
ポピュリズムの首長が多数の有権者に支持されている現実を直視したうえで、それとの理論的、実践的な格闘が求められている。
 ポピュリズム首長は、「無党派市民が支えている」というイメージに反して、実は、自民や民主などの既成政党支持層が基盤である。国政で自民・民主に投票した新自由主義・新保守主義の支持層が地方では、首長翼賛地域政党を支えている。
ポピュリズム首長の政治手法は、第一にレッテル貼りの政治、第二に抽象化された政治、感情の政治という二つの特徴がある。抽象化の政治とは、公益とか市民といった曖昧な概念を多用して自己の政治的立場を強化する手法である。感情の政治とは、政治家の個人的な心情を政治の言葉として表現し、本来ふまれるべき法的・政治的過程を素通りないし無視する姿勢である。
ナチスが設定した「敵」がユダヤ人やコミュニストであったように、日本のポピュリズム首長にとっての「敵」は、議員、公務員、教職員組合である。
大阪市民がもっと冷静になって橋下流のインチキな政治手法にだまされないことを心から願っています。
 橋下市政は公務員そして教員を自己の厳しい統制下において「独裁政治」を貫徹させようとする一方で、福祉を大胆に切り下げつつあります。ひどいものです。政治は弱者救済のためにあるはずなのに・・・。
(2012年2月刊。2400円+税)

 連休中にいつものように近くの小山に登りました。高さ380メートル、わが家から頂上まで1時間あまりです。途中に急勾配の斜面もあります。
 新緑の中を汗をかきつつ登り切りました。見晴らしのよいところでお弁当びらきをします。梅干しおにぎりを食べながら360度に広がる下界を見渡すと気宇壮大、浩然の気を養うことができます。
 薄陽のさすもとで、しばし寝ころがって風の音に耳を澄まします。すぐ近くにウグイスの清らかな鳴き声も聞こえてきました。至福のひとときです。
 山から下りる途中には赤紫のアザミの花があちこちに咲いていました。風薫る五月を実感できた一日です。
 この日、1万5000歩あるきました。翌日、なぜかお尻あたりが凝っていました。

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