弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2012年2月26日

「決着!恐竜絶滅論争」

恐竜

著者   後藤 和久 、 出版   岩波科学ライブラリー

 この本を読んで明確に認識したことが二つあります。その一は、鳥は恐竜の一部だということです。ジュラ紀後期に出現した鳥を加えて恐竜と呼ぶ。だから、恐竜絶滅論争はあくまで、非鳥型恐竜のみを扱っている。
 その二は、恐竜が絶滅したのは6550万年前の白亜紀末にメキシコ・ユカタン半島に小惑星が衝突したことによるものだというのは、30年来の論争の末に決着がついているということです。もちろん、反対説を唱えている人は今もいますが、それは実証的な反対論ではないということなのです。
衝突説にとって決定的な証拠は、1991年に、チチュルブでクレーターを発見したこと。これは直径180キロメートルの円形構造のクレーターであり、地下1キロに埋没している。
 小惑星は、地球表面に対して30度の角度で南南東の角度から現在のメキシコ・ユカタン半島に迫ってきた。その直径は10~15キロ、衝突速度は秒速20キロ、そして放出エネルギーは広島型原爆の10億倍。衝突地点では、時速1000キロをこえる爆風が吹き、衝突地点から立ち上る柱状の噴流(ブルーム)の温度は1万度。大気や地表が過熱され、地球上のいたるところが灼熱状態になった。地表面温度にして260度。
 衝突地点付近はマグニチュード11以上の地震に襲われた。メキシコ湾岸を襲った津波の高さは最大300メートルに達した。衝突によってダスト(塵)が舞いあがり、火炎にともなうスス、そして衝突地点に厚く堆積していた硫酸塩岩が蒸発することで放出された硫黄が塩酸エアロゾルとして大気に長期間の滞留し、太陽光を数ヶ月から数年にわたって遮った。これによって寒冷化が起きる。いわゆる「衝突の冬」である。最大10度は温度が下がる。硫黄が大気中に大量に放出されたことから、硫酸の酸性雨が地球上に降り注いだ。
 恐竜って、何億年も生きていたのですよね。それが一回の小惑星との衝突によって絶滅させられなんて、世の中はミステリーだらけですね。
(2011年11月刊。1200円+税)

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