弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2012年1月28日

藤原仲麻呂

日本史

著者   木本 好信 、 出版   ミネルヴァ書房

 奈良時代の中期に太政大臣になって権力を握ったものの、最期は琵琶湖そばで敗死してしまって、ながく賊臣とされてきた人物の実際が紹介された本です。
仲麻呂の政治は、儒教主義にもとづく唐風政策であった。
藤原仲麻呂の乱と一般に言われているが、実は、孝謙上皇側が乱を仕掛けた、つまり先に攻撃したものだというのが本書の結論です。
 孝謙上皇(太上天皇)は、国家の大事、賞罰、この二つは朕(自分)がすると宣言したものの、政治権力は依然として仲麻呂の手中にあって、主導権は握れなかった。それは、天皇の象徴である御璽と駅鈴を仲麻呂の仕える淳仁天皇が保持していたから。そこで孝謙上皇は、その奪取に出た。これは仲麻呂にとって想定外の、意表をつく先制攻撃だった。
 孝謙上皇は御璽を手に入れたことによって自信をもち、仲麻呂が反逆者であることを布告し、官位を奪い、藤原の姓から除くことを宣言した。この勅によって仲麻呂は謀反人とされた。
 仲麻呂を追討したあと、孝謙上皇は淳仁天皇を廃位した。そして、自ら再び称徳天皇と名を変えて再登場した。このあと、道鏡が権力をほしいままにする政治が行われた。
 藤原仲麻呂が実権を握っていたときの政治、そして日本社会の実情が明らかにされています。
 この本によると、仲麻呂は意欲的に政治に取り組み、一定の成果もあげていたようです。歴史は勝者側から一方的に悪く書かれることが多いことを意味しています。
(2011年7月刊。3500円+税)

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