弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2012年1月 8日

指導者は、こうして育つ

ヨーロッパ

著者  板倉 康夫 、 出版  吉田書店

 フランスの高等教育、グランゼコールを紹介した本です。
 グランゼコールの一つ、シアンスポはパリの中心部、カルチェラタンにあります。実は、今、私の娘がそのすぐ近くに下宿しているのです。この夏、パリに行ったときに娘の住所を探しているうちにシアンスポを発見したのでした。シアンスポは、ニコラ・サルコジ大統領の出身校でもあります。シアンスポとは、パリ政治学院のことです。
グランゼコールとは、大学とは別のエリートを選抜するための高校教育機関である。そこに入るには猛烈に勉強しなければいけない。
フランスで大学に進学するにはバカロレアに合格しなければいけない。いま同世代の66%ほどがバカロレアに合格し、その82%が大学に進学する。それとは別に存在するグランゼコールは、300校、全国で12万4000人の学生が在学する。フランス全土の大学生132万人の1割以下である。
 グランゼコールの卒業生がフランスの支配層を形づくっていると言われています。官庁も企業も、彼らによって占められているのです。
 私の好きなポール・ニザンもグランゼコール(パリの名門のひとつであるアンリ四世校)の卒業生でした。ここでサルトルと知り合い、激しい首席争いをしたのです。
 そして、ポール・ニザンは共産党に入り、教員となったあと徴兵され、ダンケルクから撤退する途中で戦死したのでした。
 20歳がひとの人生で一番美しい年齢だなどとは言わせない。これは「アデン・アラビア」の一節ですが、私も大学一年生のとき(まだ20歳になる前のことです)に読み、感銘を受けました。
 フランスのようなエリート・システムを日本も真似してよいのかどうかは疑問がありますが、フランスという国を知るには、このグランゼコールを知らなければいけないと私も思います。それにしても、バカロレアの試験問題があまりに哲学問答なのに驚かされます。この点については日本も真似てよいと思います。
(2011年9月刊。1900円+税)

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