弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2011年12月31日

仏教、本当の教え

社会

著者  植木 雅俊  、 出版  中公新書  

 目からウロコの仏教の本です。
 歴史上の人物としての釈尊はまったく女性を差別していなかった、釈尊在世のころの原始(初期)仏教の段階では、女性出家者たちが男性と対等にはつらつとした姿で修行に励んでいた。ところが、中国に入ったとき、男尊女卑の儒教倫理を重んずることから、女性を重視した箇所が翻訳改変されていった。
インド人はみんな北枕で寝ている。北枕で寝るのは日本と違って、生活習慣なのである。中国には北枕という言葉自体がない。
結婚式に、インド人は蓮の花を持参する。もっとも目出たい花として。
現在のインドには、仏教徒は人口の0.8%しかいない。
仏教の三つの特徴。
第1.仏教は徹底して平等を説いた。
第2.仏教は迷信やドグマや占いなどを徹底して排除した。
第3.仏教は西洋的な倫理観を説かなかった。
   仏教徒は最後までカースト制度を承認しなかった。これがインドに仏教が根をおろせなかった理由の一つになっている。釈尊は、人を賤しくするのも、貴くするのも、その人の行為いかんによるとして、「生まれ」による差別を否定した。
釈尊の弟子のなかに女性出家者が13人、在家の女性が10人いた。これらの女性の名前が、中国そして日本に伝わることなく削除された。教団の権威主義化にともない、在家や女性は軽視されはじめた。
  仏教は「道に迷ったもの」に正しい方角を指し示すものであって、道を歩くのは本人であるという前提がある。仏教は暗闇のなかで燈火を掲げるようなものだ。なーるほど、これだったら、仏教を信じたくなりますよね。
 ところが、日本には、分からないことイコールありがたいことという変な思想がある。そうなんですよね。わけの分からない教えだからこそありがたいというわけです。いわば呪術的に信仰するのです。これでは広がりがあろうはずはありません。だって、要するに分からないのですから。
釈尊は王制ではなく、共和制を重視していた。日本では仏教用語や哲学用語が、安易でおかしな方向に引きずられてしまいがちだ。哲学的・思想的対決を真剣にやろうという姿勢があまりない。
 サンスクリット語の原典からひもといて、中国の訳そして日本語訳を比較して論じられています。すごい学者です。巻末の著者紹介をみると、ほとんど同世代ではありますが、私より若いということに衝撃すら覚えました。学者は偉いです。
 あなたもぜひ手にとってご一読ください。仏教を語れなくて日本人とは言えませんからね。
(2011年11月刊。800円+税)

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