弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2011年12月27日

暴力団

社会

著者   溝口 敦 、 出版   新潮新書

 私の住む町では、暴力団員のことをヨゴレとも言います。まさに、社会の汚れた部分です。でも、大企業を先頭として、日本人は暴力団をすぐに「利用」したがります。もちろん、財界だけではありません。政治家も芸能界も暴力団との結びつき(汚染度)はとても濃厚です。ゼネコンは暴力団抜きには存在自体がないのではないかと思えるほどです。
 日本社会の暴力団とアメリカ社会のマフィアとの最大の違いは、公然性と非公然性にある。アメリカの組織犯罪は、まさしく徹底した秘密組織である。ところが、日本では、暴力団が事務所を町の一等地に堂々と開設している。
 アメリカのことは知りませんが、日本では暴力団事務所は町なかに堂々オープンしています。神戸にある山口組本部の事務所は神戸地裁のすぐ近くにあるようですね。
 私の住んでいる町でも、天下の大企業が戦前より一貫して暴力団を養ってきたことで有名です。労働争議の起きたときには、子飼いの組員がドスを持って労働者を脅しまわり、ついには殺傷事件まで起こしました。
 この本にも指摘されていますが、公共事業の結合も暴力団が裏で取り仕切っているのが実態です。市長と市議会議長そして警察署長が肩を並べて暴力追放パレードを時折していますが、ほんの形ばかりです。決して本気で談合を取り締まったり、暴力団を壊滅させようとはしていません。残念です。
 暴力団が強いのは、なんといってもお金を持っているからです。この本は、暴力団は今や青息吐息としていますが、不景気の続く私の町でも暴力団だけは、なぜか依然として金まわりが良いのです。覚醒剤だけでなく、みかじめ料そしてヤミ金などのあがりがあって、さらに夜の街を支配しているからなのでしょう。
 この本によると、産業処理業も、うまい事業のようです。
暴力団員は長生きできない。たとえば、刺青を入れると、そのためC型肝炎に感染することが多い。針やインクを使い回すからだ。肝臓病や糖尿病も多い。
 暴力団は辞めたい、抜けたいという者をあっさりとは認めない。脅し、難題を吹っかけて、お金を巻きあげようとする。組員の暴力団からの離脱は、脱サラの何倍も困難だ。
 組長でさえ、なかなか引退せず、組を抜けたがらないのは、実は抜けるのが恐ろしいから。組を抜けるともとの若い衆は寄りつかないどころか、逆に元の親分からお金をむしり取ろうとする。元組長は、お金をよほど巧妙に隠していないと、元子分の若い者に食われ、丸裸にされてしまう。
 組を辞めた者に対しては徹底的に踏みつけにして、びた一文残さないほど、むしり取る。これが日本の暴力団の流儀である。やめた者は裏切り者だという認識がある。うへーっ、これって怖いですね。元組長って、安穏と隠退生活を楽しんでいるものとばかり思っていました。
 日本の暴力団対策法は、暴力団と警察が共存共栄を図る法律ではないのか。なぜ、暴力団は違法だと国会は頭から決めつけなかったのか・・・?
 暴力団という組織犯罪集団の存在を認める法律を持っているのは、世界広しといえども日本だけである。
 うむむ、暴対法って、やっぱり暴力団の存在を前提とした法律なのですね。おかしなことですね。暴力団とは関わりたくはありませんが、仕事上で、どうしても時折、接触せざるをえません。チンピラのすご味もそこそこ脅威です。暴力団の実態を知る手引書として一読の価値があります。
(2011年6月刊。760円+税)

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー