弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2011年12月18日

みえない雲(コミック)

ドイツ

著者   グードルン・パウゼヴァング、アニケ・ハーゲ 、 出版   小学館文庫

 ドイツを脱原発へ導いた話題の小説をコミック化したものです。映画にもなっているようです。恐ろしいマンガです。背筋がひたすら寒くなってきます。
 ドイツにも原発があります。そこで事故が起きて放射能が漏れ出します。付近住民は避難を命じられますが、道路はどこもかしこも渋滞します。
 両親が留守だったので、14歳の少女は小学2年生の弟を連れて脱出を図ります。自転車に乗って、ひたすら遠くを目ざします。ところが、弟は猛スピードで走る車にはねられて死んでしまうのでした。
放射能は臭いもせず、色もないので、不気味さばかり漂っています。
 大勢の人が逃げまどう様は哀れとしか言いようがありません。病院は、既に病人で満杯です。
 頭の髪の毛が抜けていきます。放射能で汚染されてしまったのです。学校では、そのことで、差別され、いじめられます。子どもたちから将来を奪ってしまうのが原発です。
 私は東電の歴代の社長を実刑にして刑務所に入れられないようでは、日本の司法の力って、口ほどのこともなく、たいして機能していないようにしか思えません。
 わずか1000円足らずの万引きで懲役1年の実刑という事件が珍しくなくなっています。何万人もの人々を突然家から追い出し、慣れない仮設住宅などでの生活を余儀なくさせているのは東電です。予見可能性はありました。予見する能力も十分です。単に利潤第一主義に走って、それらを怠っただけです。それなら、当然、東電の歴代の社長は懲役10年程度の実刑に処すべきではないでしょうか。東電の会長は居座ったままですが、それを許していて、この社会の秩序は維持できるのでしょうか。社会正義はどこへ行ったのでしょうか。いまこそ東京地検特捜部への出番なのではないでしょうか。
東電の社長がいなくても補償対策は十分にできると思いますし、原発事故対応も可能だと思います。
 皆さん、東電の歴代社長の刑事責任を問わなくていいと思いますか、おたずねします。
(2011年10月刊。543円+税)

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