弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2011年11月15日

チェルノブイリ・ハート

社会

 著者 マリアン・デレオ、 合同出版 
 
  わずか90頁あまりの少ない写真集なのですが、まさしく衝撃の告発集です。
 ともかく正視できないのです。むごい写真がいくつも登場します。思わず目をそむけたくなります。でも、勇気をふるってじっと見つめました。
 ま、まさかという写真です。脳が頭蓋骨に収まらず、後頭部に突き出している子どもがいます。信じられない奇型です。生きている子どもなんですよ・・・。
 背中から内臓が突出し、大きく垂れている。膨れた袋の中にあるのは肝臓で、足はまったく動かせない。看護師に抱かれている可愛い顔をした男の子の写真です。
 この本はアカデミー賞を受賞したドキュメンタリー映画を本にしたものです。
 1986年4月26日、史上最悪の原発事故が発生。190トンの放射性ウラニウムと放射性黒鉛を大気中に拡散させた。そして、のべ60万人も事故処理作業員(リクビタートル)が出動し、処理にあたった。彼らは大量の放射能を浴びた。事故以来、死亡したリクビダートルは1万3000人以上。
 このチェルノブイリ事故当時に幼少期や思春期だった子どもたちが、甲状腺がん多発の年齢層と重なる。ゴメリ州の甲状腺がんの発生率は、チェルノブイリ事故のあと1万倍に増加した。
 放射能の影響と断定はできないが、心身の障害児は増加傾向にある。
 水頭症の子どももたくさんいる。未熟児の増加は大きな問題となっている。むしろ健常児の生まれるのは15~20%にすぎない。遺伝子破損の患者が大勢入院している。遺伝子の破損によって子どもも次々に亡くなっている。
 汚染地区には、いまなお600万人もの人々が居住している。年間300人の子供が心臓手術を必要としている。心臓に複数の穴が開く先天性障害の子がチェルノブイリ事故のあと増加傾向にある。
チェルノブイリの原発炉跡を追おう石棺は早急に修理しないと非常に危険な状態にある。ひとたび石棺が崩壊し、まだ原子炉内に97%も残っている放射性物質が飛び出したら、世界中が深刻な被害を受けることになる。
 今、フクシマはチェルノブイリと同じレベルの原発事故を起こしたとされています。ところが、福島県内にはかなりの汚染濃度のある地域に人々が住み続けています。この写真で紹介されているような事態が起きないという保障はないのではありませんか・・・?
 「今すぐには影響は考えられない」という耳タコの説明は、何年後かにはチェルノブイリのようになる可能性があるとも解されます。原発は本当に危険すぎます。すぐに全停止すべきです。人類がこの地球上に生存するために必要なことです。みんなで声を上げましょう。
目をそらせない貴重な写真です。ぜひ手にとってご覧ください。
         (2011年10月刊。800円+税)

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