弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2011年11月14日

世界一のトイレ、ウォシュレット開発物語

社会

著者   林 良祐 、 出版   朝日新書

 毎日、大変お世話になっているトイレの便器のお話です。なるほど、日本人の繊細さによくマッチした製品はこうやってつくるのか、感嘆しながら読みすすめました。
 日本はケータイもガラパゴス的に特異な進化をみせているが、トイレについても同じことが言える。3年もすれば「古い」と言われる。本当にそのとおりです。今どきは、駅のトイレでもウォシュレット式は普通になっています。ホテルやレストランでウォシュレットになっていないと、ここは設備投資が遅れているなと不満を感じてしまいます。ましてや和式便器なんて、論外です。観光地で昔ながらのボットン式なんていったら、もう悪評ぷんぷん、誰が次から来るものですか。
 ところが、先日行ったフランスでは違うのですよね。駅ではトイレを探しあてるのに一苦労します。最近は行っていませんが、中国でもびっくりさせられましたね。
温水洗浄便座の家庭の普及率は71%。累計の出荷台数は3000万台をこえた。今や旅行のための携帯用のトラベルウォシュレットが人気で、隠れたロングセラーになっている。さすがの私も、これはまだ持っていません。
 日本人は毎日、お風呂に入って身体を洗う、きれい好き。新しいものへの抵抗感が少ない。まったく、そのとおりです。だからウォシュレットが世界に先駆けて普及しました。
お湯の温度は38度、便座の温度は30度、乾燥用の温風は50度が最適。そして、ノズルで水を出す角度は43度。ビデの方は53度。おしり洗浄は3穴、ビデ洗浄は5穴。うむむ、みんな決まっているのですね。
 ウォシュレットの語源は、レッツ・ウォッシュ。これを逆さにしたもの。今から30年前の1980年6月に完成した。
 1982年、「おしりだって、洗ってほしい」のテレビCMが茶の間に夜7時のゴールデンタイムに流れた。初めは恐る恐るだったようです。意外にも反発はされなかったとのこと。
 においをとるために、オゾン脱臭方式がとられた今では、オゾンを使わずに、空気中の酸素を有効に使う、触媒脱臭方式へ進化している。
TOTO小倉工場は小倉城に近い市街地にある。東京ドーム4個分という広大な敷地で1日あたり2000台の便器を生産する。1台の便器が完成するまで8時間かかる。
 ここでは、便器の原料として、岡山(備前焼)県産の陶石、滋賀(信楽焼)県産の長石、愛知(常滑焼)県産の粘土を混ぜ合わせる。海外の工場では現地産を中心に調達している。
 空気混入ノズルは、水に空気を含ませることで、水の粒を大型化し、従来の水量の65%の量でも、たっぷりとした量を浴びているような浴び心地になるもの。低速で噴射した水に高速で噴射した水をぶつけると、後から出た水が追いついて、水の表面張力によって固まり、水玉ができる。ワンダーウェーブ洗浄では、1秒間に70回以上の脈動を与えることにより、流量2分の1で、洗浄力は2倍アップを実現した。しっかりとあたる強い吐水と、水をセーブする弱い吐水を1秒間に70回以上繰り返して水玉を連射し、2倍の洗浄力を可能にした。
 便器のほうも、いつまでも汚れがつきにくく、落ちやすい便器を開発した。ナノレベル(ミクロンのさらに1000分の1、100万分の1ミリ)に平滑なガラス層を設けることで汚れをつきにくくした新素材「セフィオンテイト」をつくり出した。これには汚れをイオンの力で跳ね返すイオンバリア効果もある。すごいですね、これって・・・。
 日本人の生活用水の使用量は1人1日あたり298リットル。この20年間、横ばい状態。使用量の第1位はトイレ(28%)、2位は風呂(24%)、3位は炊事(23%)、4位が洗濯 (16%)、5位が洗顔・その他(9%)。そして、日本全体で1日に東京ドーム37個分の水がトイレの洗浄に使われている。
 そこで、TOTOでは、2006年以降、洗浄水量を6リットル、5.5リットル、4.8リットルと削減していった。
たかがトイレの便器、されど毎日お世話になるトイレです。ありがたいものです。すごい苦労があることを知って感謝感謝です。
(2011年9月刊。720円+税)

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