弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2011年9月25日

スピーチの奥義

社会

著者  寺澤 芳男  、 出版  光文社新書

 人前で話すのは、とても難しいものです。私も、今ではなんとか慣れましたが、一瞬、頭の中が真っ白になるという経験は何回もしました。焦りましたよ・・・・。
 この本は、その克服法が具体的に語られていて、とても参考になります。
 聞く人も、とても緊張している。このことを意識するだけで、自分自身の緊張は、かなり和らぐ。自分が聴衆の緊張をほぐさなければという気持ちになったらいい。相手を緊張させまい、自分が緊張している場合ではない。そう思うこと。これで結果として、うまく緊張をほぐすことができる。
 面白くなかったという経験をたくさんしているだけに、人々のスピーチに対する期待度はそれほど高くはない。存外おもしろい話を聞けると、ものすごくトクをした気分になる。
スピーチをする以上は話を聞いてもらわなければ意味はない。最初の一分で聴衆の耳目をひきつけられたら、8割方は成功。
聴衆の期待に応えなくては、というプレッシャーから解放されて、自分なりに一生懸命に話すことに集中しようと思うこと。
ウケを狙った作為的なスピーチは十中八九、失敗する。大切なのは、ウケようなどとあざといことを考えず、これを伝えたいんだという情熱に任せて、とにかく自信を持って、突っ走ること。そうすると、内容がそれほど面白くなくても、聴衆は、話し手の必死な姿に心を打たれる。
第一声はジョークにしたらいい。最初に一気に緊張をほぐす工夫が必要だ。ええーっ、そんなこと言われても、ジョークから話を切り出すなんて難しいことですよ・・・・。
自己紹介は、自慢話に聞こえないように配慮する必要がある。
はじめに型にはまった挨拶はいらない。挨拶抜きで、いきなり本題に入ったほうがいい。
私も、日頃そのことを心がけています。急にピンチヒッターを命じられまして・・・・とか、くどくどした弁解話なんて、誰も聞きたくなんかありません。
相手の頭の中に何を残すかを優先して考える。自分の口よりも、相手の耳を意識すること。
人間というのは、不思議なもので自ら弱点を堂々とさらけ出す人のことは逆に信用する。聴衆が話し手である自分に懐疑的もしくは否定的な目を向けているような集まりでは、そんな聴衆の気持ちをまずしっかり受け止めること。その気持ちを代弁しながら、そう思われるのも、ごもっともですと自分の弱点をさらけ出す。これが大切だ。
 なーるほど。でもこれって、なかなか出来ないことですけどね・・・・。
人間の集中力は、せいぜい15~20分。長く話すときは、聴衆の集中力の切れる15分を目処に話の切れ目をつくって、注意を喚起することが必要だ。
 聴衆が、もう少し聞きたいと思うところで話を終える。8割でスピーチをやめて、ちょうどいい。テーマは、2つ以内にしぼること。どんなに多くても3つに留めたい。
毎日を人生最後の日と思って努力すれば、いずれ望みはかなえられる。もし、今日が自分の人生の最後の日だったら、今日の予定をそのままこなすか?そのように自問自答すること。時間には限りがある。
他人の人生を歩むのはやめよう。他人のつくった固定観念の罠にとらわれないようにしよう。
 結論ファースト、これが鉄則だ。最初に1、2分のまくらがあって、すぐに今日はこういう話をすると肝心なメッセージを送っておく。結論を先延ばしにすると、聴衆の気持ちは離れていく。
話が難しければ、難しいほど、平易な言葉で分かりやすく話すことが重要になる。
 話すときには動き回ったほうがいい。そのほうが話に躍動感が出てくるし、頭の回転も良くなる。
とても実践的で、役に立つ内容でした。早速つかってみましょう。

(2011年5月刊。740円+税)

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー