弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2011年9月14日

がん患者

人間

著者   鳥越 俊太郎 、 出版   講談社

 まずは表紙の写真に目が惹きつけられます。大腸がん発覚から5年、手術を4回も受け、ステージ4のがん患者とオビにありますが、上半身裸の著者の肉体は健康そのもの。顔色も良すぎるほどで、ボディビルの選手権大会にこれから出るのかと思わせるほどです。
 しかし、本を読むと、やっぱりがん患者としての苦難の日々が書きしるされています。そこには嘘もハッタリもありません。かなり率直な心情が吐露されていて、思わず没入していきます。
著者には持病の痛風があった。それでも、1年365日ビールは欠かさなかった。そのビールがおいしくなくなった。これが異変の第一だった。
 私は3年前からビールを飲んでいません。ダイエットの第一歩としてビールを止めました。夏でも、冷えたミネラルウォーターを美味しく飲んでいます。まず、日本酒をやめ、次に白ワインをやめ、そしてビールをやめたのでした。逆にいうと、焼酎(主としてお湯割り)や赤ワインを外で飲み、自宅では専ら果実酒です。少し甘いのがいいのです。書面を書きながら、少しずついただいています。
 さすがに著者はマスコミ界で生きてきた人です。がん告知の瞬間からテレビカメラの前に立つのでした。これはなかなか真似できることではありませんね。
 大腸がんと分かったとき、カメラで自分自身も腸の内部を見ることができる。そのサーモンピンク色の美しさに著者は驚いています。
 私も人間ドッグには定期的に入っていますので、写真で自分の腸の内部を見ていますが、本当にきれいなものです。これは、たとえ「腹黒い」人間でも変わらずピンク色なのである。それは、そうでしょう。同じ人間なのですから・・・。
著者の大腸がんは馬蹄形に肉が盛り上がり、中央部のへこんだ部分は黒く濁った色をしている。盛り上がった、ちょうど火山の外輪山の部分からは、赤い血が幾筋が見える。これぞまさしく、まごうことなきがん部分である。
 入院中の著者の写真があります。さすがに精気のない、疲れて、さえない表情をしています。本の表紙の顔写真とはえらい違いです。それにしても可愛らしい美人の若い看護師さんにあたったようで、うらやましい限りです。
 著者の武器は二つ。好奇心と集中力。根っからの好奇心人間。努力ということばが大嫌いの生来怠け者である。そして性格は能天気。好奇心は人間の強力な武器だが、これだけでは世間は渡れない。もう一つの武器が集中力という特技だ。
私自身はコツコツ努力型で、これまでの人生を乗り切ってきました。好奇心と集中力は似ていますが・・・。
 著者は無事に大腸がんを摘出したかと思うと、次は肺、そして肝臓へもがんは転移していたのでした。著者は抗がん剤を飲みつつ副作用に苦しむことはなかったようです。そして、漢方薬によって免疫力を高める治療も同時に受けています。
 そして、今では仕事量は前の3倍。さらには週に3回事務に通って筋力トレーニングに専念しているそうです。
生活の質を確保しながらのがん患者として前向きに生きている様子の伝わってくる,
爽やかな読後感の残るいい本でした。
(2011年8月刊。1600円+税)

 日曜日に庭に出てナツメの実を取りました。張りに刺されるような気をつかいながらでしたが、小さなザル一杯分が集まりました。1年後のナツメ酒が楽しみです。
 珍しくツクツクボーシが鳴いていました。いよいよ夏も終わりでーす。ピンクの芙蓉の花に黒アゲハがとまってせわしげに蜜を吸っています。もうすぐ酔芙蓉の花も咲いてくれることでしょう。朝のうちは白い花、午後からは酔ったように赤い(ピンクの)花を咲かせてくれる花です。

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