弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2011年9月 2日

江戸に学ぶエコ生活術

日本史(江戸)

著者    アズビー・ブラウン  、 出版   阪急コミュニケーションズ

 日本人女性を妻とするアメリカ人による江戸時代の人々の生活を紹介する本です。この本の異色なところは、著者による(と思われる)豊富なイラスト(図解)です。
 江戸時代の日本人は、実に賢明で美しいライフスタイルを持っていた。日本人は、そのことを誇りに思うべきだ。しかし、現代日本人は我が身を振り返ってほしい。江戸時代の良さをほとんど捨て去ってしまった。もはや、その痕跡はほとんど残っていない。これは、きわめて残念なことであり、悲劇だとも言える。うむむ、そう言われても・・・。
 江戸時代の日本は、人権を除いて、林業、農業、建築、都市計画、輸送手段のいずれをとってもサスティナブルだった。グローバルな視点こそなかったが、当時の日本は、国境を越えて環境に悪影響を及ぼすことなく、国として自立的に機能し、3000万人もの人口を抱えながら、安定した社会を持続させていた。人々は自発的に出生率を制限した結果、日本の人口は江戸時代を通じて安定した人口を保っていた。
 これって積極的に評価していいことなのか、私にはよく分かりません。生まれた子を間引きするのは珍しいことではありませんでした。名前も適当につけていたという話もあります。まだ人間の子どもではなく、神の子として扱われていたという説もあります。いったい、どういうことなのでしょうか・・・。
 日本人は、江戸時代も風呂好きだったのですね。まだ石けんはありませんでしたので、米ぬかを入れた布袋で身体をこすっていたようです。そして、風呂は混浴です。行水するときも、若い女性が平気で道端で裸になっていたという目撃記がたくさんあります。
 衣類はほどいて、何度も仕立て直して再利用するのがあたりまえでした。私の幼いころ、靴下や下着のほころびを縫い直すというのは当然のことで、母親が夜なべ仕事として、していました。今では、そんな光景は見かけませんよね。
 農民の識字率は60%をこえていた。このため農業が普及していた。村役人は、算術やそろばんを使い、高い教養があった。これは、書状のやりとりが必要な武士階級と変わらない。
 アメリカ人によって日本の江戸時代の生活をイメージできるというのも変ですが、いい本はいいものです。
(2011年3月刊。2000円+税)

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