弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2011年8月28日

トキワ荘、最後の住人の記録

社会

著者    山内  ジョージ  、 出版    東京書籍

 楽しい本です。私にとっては、イヤミだの、シェーだの、思い出深いマンガがつくられた舞台裏の話が満載なので、面白く読みふけってしまいました。
 トキワ荘というと手塚治虫を連想しますが、著者は少し後の世代なので、残念ながら住人としては手塚治虫は登場してきません。トキワ荘の住人として登場してくるのは、石ノ森章太郎と赤塚不二夫です。
 著者はトキワ荘の住人としてアシスタント稼業にいそしんでいました。惜しいことにトキワ荘は今はありません。目白駅近くの目白通りにあったオンボロアパートにそうそうたるマンガ家たちが、みんな卵だったころ、ひしめきあって住んでいたのです。一度は現地に行ってみたいなと思います。
 著者が宮城県から上京したのは昭和33年の夏のことです。中学校のときの修学旅行以来2度目に東京でした。トキワ荘を一路目ざし、高校の先輩である石ノ森章太郎をたずねていったのです。
 著者のマンガもなかなかのもので、私なんかうまいと思いますが、やはり世の中には上には上がいるものです。石ノ森章太郎にはとてもかないません。アシスタントは辛いものです。3日間で合計6時間しか眠れず、仕事が終わったらふらふらしていた。こんなんじゃ長生きはできないだろうなあとしみじみ思った。漫画家はタフじゃなければつとまらない。と言いつつ、著者は70歳の今も元気なのです。
 赤塚不二夫のアシスタントをしていたとき、原稿が遅れに遅れ、とうとう印刷所に連れていかれた赤塚さんについていった。印刷現場に隣接する校正室で執筆し、描き上げるそばから一枚ずつ印刷現場に持っていく。赤塚さんを手伝い、仕上げの消しゴムを当てる。その消しゴムを当てないうちに、時間がないと言って持っていかれた・・・。それにしても漫画家というのは、まことに心臓によろしくないと、つくづく身にしみて思った。というのです。弁護士の仕事でも、そんなことがありそうな状況です。はい、時間に追われ、時間との戦いになることは弁護士だってあるのですよ・・・。
 シェーという振り付けが流行したのは昭和40年。ゴジラもシェーをする。長嶋茂雄もシェーをし、果ては昭和41年に来日したビートルズまでシェーをしたという。本当かいな・・・?
九州には、東日本漫画研究会九州支部ができたというのです。なんと変てこな名称でしょうか。松本零士や内山安二(私は知りません)が会員だったとのこと。
 昔なつかしいマンガの舞台裏をひととき味わい、楽しみました。
(2011年6月刊。1600円+税)

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