弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2011年8月13日

警視庁捜査一課刑事

社会

著者   飯田 裕久   、 出版   朝日文庫

 警視庁捜査一課に12年のあいだ在籍し、勤続25年で退職して分筆業で活躍していた著者は、昨年、46歳の若さで惜しくも急逝されました。この本は自らの体験にもとづく本ですから、並みいる警察小説とは迫真度が違います。
 「○○刑事」というのは、もっぱら巡査の場合のみ。「部長」というと、一般会社では大変な地位であるから、知らない人は大幹部のように受け取るが、実は巡査部長、つまり巡査の一つだけうえの階級の者に過ぎない。
 係長は、警部補。キャップとも呼ぶ。係長の下が主任。巡査部長がなる。末席は巡査。
日本の警察官、とくに私服刑事は、宿直以外の通常勤務のときには拳銃を着装しない。拳銃は泊まりの日につけるだけという悲しい事実が定着している。有事の際に拳銃をつけて出勤するという習慣が、まるで出来ていない。
 特別捜査本部の捜査会議の様子が紹介されています。これは既に、幾多の警察小説に出てくるのとまったく変わりありません。地取りなどをやって帰ってくると、朝の会議で順に報告させられ、それが中途半端だとヒナ壇からガンガンこき下ろされるというのです。それこそ、死ねといわんばかりにやり込められる。ふむふむ、プロの世界ですね。
 最後に警察隠語集が紹介されています。知らないものがいくつもありました。
 アカ落ち・・・服役を終えること。
 牛の爪・・・・初めから犯人が割れている事件。
 グニ屋・・・・質屋。
 ゴンゾウ・・・・ベテランの域に達してもダメな警察官。
 ごんべん・・・詐欺
著者は警察をやめたあとは刑事ドラマの監修の仕事に転職していたようです。
(2011年4月刊。640円+税)

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