弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2011年6月30日

刑務所のいま

司法

著者   日弁連   、 出版   ぎょうせい

 受刑者の処遇と更生について、日弁連拘禁制度改革実現本部がまとめた分かりやすい170頁余の冊子です。
 日本の刑務所のなかが実際にどのように運営されているのか、それは諸外国とどこが違うのか、コンパクトによくまとめられています。
刑務所の収容数のピークは2006年で8万1000人。2009年は少し減って7万5000人。
無期懲役は、今では運営上、死ぬまで刑務所を出られない終身刑化しつつある。
 日本は刑務所職員の1人あたり4.5人の受刑者をかかえている。これは、過剰収容のアメリカでさえ1人あたり3人、ドイツやフランスでは2人、イギリスでは1.5人というのに比べて、明らかに多すぎる。日本の刑務所の労働条件は、きわめて過酷である。
 今の世の中、厳罰化を求める声がかまびすしいのですが、収容所を増やせば刑務所の職員も増やさなくてはいけません。ところが、もう一方で公務員を減らせという圧力もかかっています。これでは、まともな矯正教育を保障することは出来ません。
 出所後5年以内の再犯率は50%。受刑者の4分の1を占める薬物事犯(女性では40%をこえる)の再犯率は年々ふえている。彼らは薬物依存症という病気にかかっている。
3割の再犯者によって6割の犯罪がなされている現実がある。だから、犯罪対策としては、とりわけ再犯防止対策が重要である。
 刑務所内で収容者が働いても、その賃金は月4200円が平均。この金額は日給ではなく、あくまで月給である。異常に低いものです。ですから、刑務所を出るときの所持金は平均4万3000円でしかない。
 アメリカの刑務所の収容者は230万人。ところが、20年前の1992年には130万人だったので、20年足らずで受刑者は2倍になったわけである。これだけ多いと、アメリカでは収容者を対象としたビジネスが成り立っているというのも、よく理解できます。
 収容者の高齢化がすすんでいる。60歳台では6年前の10%未満が12%超へ、70歳台では2%強が3%強へと、受刑者に占める割合も実人員も増えている。
高齢者が増えると、医療費もかさむ。全国の刑務所の医療関連予算は、2005年に30億円だったのが、2009年度には49億円になった。
刑務所も拘置所も収容者の高齢化には頭を悩ませており、専門の介護職が必要だと指摘されているようです。やはり刑務所の実情をふまえた量刑が必要です。市民が刑務所を訪問できるようになっているそうです。もっと交流する必要がありますよね。
(2011年5月刊。1714円+税)

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