弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2011年5月28日

世界の少数民族文化図鑑

人間

著者    ピアーズ・ギボン、 出版    柊風舎
 
 この地球上には、さまざまな文化を持って生活している少数民族が無数に存在していることを実感させてくれる大型の写真集です。少数民族といっても、合計すると1億5千万人だといいますから、決してちっぽけな存在というわけではありません。
 みんな違って、みんないい。
 金子みすずの詩が思い起こされます。
 結婚とは、両家族のメンバーに移動があることを公然と明らかにする儀礼のことである。そして、経済的な責任を必然的にともなう契約である。
お互いに惹かれあう大きなポイントは、健康的な赤ん坊をつくりたいという願望からきている。ヒップとウエストの比が平均で0.7というのは、つまり「砂時計のように腰のくびれた」女性の体形は、健康体であるとともに子どもを出産する能力の指標といえる。
 互いに一番よい組み合わせとなる遺伝子型をもつ相手、つまり遺伝学的に適合した相手を求める傾向がある。匂いは身体的な魅力に欠かせない要素である。人は、お互いに健康な子孫をもてそうな異性の匂いにのみ惹きつけられる。女性は、遺伝子的に自分と似ていない男性により強く惹かれる。そんな二人が結ばれると、免疫遺伝子の幅が広がり、健康な子孫を持つ可能性が高まる。逆に、よく似た匂いをもつ男女は、お互いに避ける傾向がある。なーるほど、そういうことも言えるのですね。
 ダウリ(持参金)は、しばしば娘の嫁ぎ先へ「支払うこと」と説明される。しかし、ダウリの恩恵を得ているのは当の娘であり、お金は彼女と彼女の新家族のものである。ダウリは息子ではなく娘の結婚に支払われるが、その理由の一つは、息子は遺産を相続するが、娘はその機会がないことにある。相続することのできない娘への賠償がダウリであると言える。ふむふむ、改めて認識しました。
 カラハリ砂漠のクンの女性は、ブッシュのなかで赤ん坊を産み、彼女1人が母親のみの付き添いで対処する。もし彼女が育てないと決めたら、赤ん坊は産まれてすぐ窒息死させられてしまう。これは罪とは見なされず、やむをえないことだと同情される。というのも、砂漠は人々に十分な食料をもたらさないので、余分の子どもを養うことはできないからだ。
 インド北部のヒンズー社会において、高位のカースト社会の妻は夫と離婚することはできない。彼女の献身のあかしは、夫が死んだとき、夫を火葬するために燃えさかる薪のなかに身を投げ出し、夫の遺体と一緒に荼毘に付されることである。ただし、妻を亡くした男は再婚が期待される。うへーっ、これって恐ろしいことですね。すぐにも止めさせなくてはいけませんよ・・・。
 アラスカのイヌイットの人にとって、離婚とは単に夫と妻がもはや一緒に暮らさないというだけのこと。結婚は永久的な結びつきではないので、離婚という概念すら必要ない。
カラハリ砂漠のクンは平和を好む人たちである。この首長の地位は、一般に父から息子へ継承されるが、父から娘へ受け継がれる場合がある。
クンは肉をバンド(集団)内で分配する習慣を忠実に守っている。しかし、その量は食料全体の摂取量の20%にすぎず、しかも、彼らが取り入れるタンパク質のほぼすべてである。食事は一人でとってならないという規則があり、複雑な分配の仕方をする。クンの食べ物の80%は野生植物からである。
いやはや地球は広いんですね。少数民族とその文化を知ることは、人間というものを知ることだとつくづく思いました。高価な本ですが、それだけの価値はあります。
(2011年2月刊。1300円+税)

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