弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2011年5月17日

米軍基地の現場から

社会

著者   沖縄タイムズほか  、 出版   高文研

東日本大震災で在日米軍がトモダチ作戦ということで救援活動をしていることから、日本のマスコミは日米安保条約をますます無条件肯定の報道をしています。しかし、本当に日米安保条約のあるおかげで日本は助かっているのか、私は大いに疑問を感じています。イラクやアフガニスタンで大々的な侵略戦争を展開しているアメリカ軍が、急に日本で平和活動のみに従事しているなんて、そんな思い込みはあまりにもお人好しとしかいいようがないのではないでしょうか・・・。
この本では、日本安保は、本当に日本の平和を守ってきたのかという疑問で貫かれています。私は、この疑問を日本人は忘れてはいけないと思います。
横須賀基地に配属されているアメリカの原子力空母ジョージ・ワシントンは、放射性廃棄物を1トンも貨物船で搬出した。放射能の心配がある。
アメリカ軍のグアム移転の費用について、アメリカ軍は実際より過大な人員と費用を計上していたことが暴露されました。これは日本側の負担割合を小さく見せるための工夫だというのです。実に日本国民を馬鹿にしています。自民党そして民主党政権も、きっとそんなことは知っていたでしょうから、日本国民だましでは共犯関係にあります。日本政府だけでなくアメリカ政府の言うことも、そのまま信じてはいけませんよね。トモダチ作戦でアメリカ軍が実際には何をしたのか、一部の新聞に少しずつ実相が明らかにされています。
アメリカ本土から海兵隊の放射能対処専門部隊150人が派遣されて日本に来たことは大きく報道されました。しかし、結局、福島県内に入ることもなく、アメリカに帰っていきました。アメリカ政府が福島第一原発から80キロ圏内を退避区域として設定したことによるようです。
アメリカ軍が最大時で人員2万人、艦船20隻、航空機160機を動員したことは事実です。そして、これらの部隊の大半が4月上旬には撤退しました。アメリカ政府による作戦の予算上限8000万ドル(68億円)に近づいたためです。
そして、ここで見逃せないのは、アメリカ軍と自衛隊が指令部機能の一体化が急速に進んだという事実です。そして、日本のマスコミと世論のなかで、アメリカのおかげで助かったというムードを醸成し、日米安保肯定論を強化できました。
この本を読んで改めて日本人として腹が立つのは、アメリカ軍人が日本国内で犯罪をおかしても、まともに逮捕も捜査もされないという事実です。これでは、日本はアメリカの植民地のようなものです。
2004年8月の沖縄国際大学にアメリカ海兵隊のヘリコプターが墜落炎上した事故についても、結局、アメリカ軍の整備士4人は全員が不起訴処分となっています。公務中の事故なので、そもそも日本には裁判権がありませんでした。くやしいです・・・!!
1995年から2008年までにアメリカ軍関係者の起こした凶悪事件は110件、逮捕者
152人。このうち日本が起訴前の犯人引き渡しを求めたのは横須賀のタクシー強盗殺人など、6件、6人にすぎない。事実上、日本に裁量権はない。いやはや、ぐやじー、許せない・・・!!!
そして、アメリカ兵が逮捕されて実刑となって刑務所に入っても、見事に優遇されます。この本では朝食しか紹介されていませんが、フレンチトーストにシリアル、ベーコン、オムレツ、さらにミルクとバナナ持つく充実ぶり。夕食にはステーキもつくといいますから、日本人の収容者とは比べものになりません。
 アメリカ軍の飛行機の出す爆音がひどすぎるというので、これまで日本の裁判所は何回となく受忍限度をこえる違法な爆音だとして損害賠償を命じてきました。ところが、アメリカはまったく賠償金を負担せず、すべては日本政府がアメリカ軍に代わって日本国民の税金でまかなっているのです。なんとひどいことでしょう。
 アメリカ政府もアメリカ軍も日本国民を守るために日本に基地を置いているわけではないと再三再四、高言しています。ところが、日本政府と日本のマスコミだけは相変わらず、アメリカ軍がいるおかげで日本の平和と安全が保たれていると言い続けています。こんなことって奇妙ですよね。アメリカ軍が本気になって日本を守る気があるなんて、私にはとても思えません。
(2011年5月刊。1700円+税)

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