弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2011年5月13日

原発と地震

社会

著者   新潟日報社特別取材班 、 出版   講談社

今からわずか4年前のことでしかありませんが、東日本大震災が起きた今では、なんだか古い過去の出来事のように思えてなりません。
2007年7月16日、中越沖地震によって東京電力の柏崎刈羽原子力発電所で動いていた原子炉が7基すべて緊急停止した。
原子炉は停止すれば安全というわけではない。炉水温度を百度以下に冷やして初めて安全が確保される。そうなんですね。今回の福島原発事故でも、この「百度以下」というのが容易に達成できずに推移しています。とても心配な事態です。
地震から5ヶ月たったころ、東京電力は新潟県に対して30億円もの寄付を申し出た。このお金で県民の感情を斉めようとしたわけですよね。でも今回は規模がケタ違いですから、こんな金額ではすみません。何兆円、何十兆円もの損害の補填が求められています。
この柏崎刈羽原発の建設用地の売買には、かの田中角栄が関わっていたようです。
1971年に、土地売却益の4億円が東京、目白の田中角栄邸に運んだことを認める証言を取材班は引き出しています。
「不毛」の砂丘地帯がお金にかわった代償が有力政治家の懐に入っていったというわけです。そして、そのツケを払わされたのは新潟県民でした。
現在の東電・清水正孝社長は、当時副社長でもあり、勝俣会長が社長でした。このコンビは、経費削減を優先して安全を無視したわけです。歴史に記録されるべき人名でしょう。なんといってもトップの責任は重大です。
班目春樹委員長が私と同世代だということも確認しました。原発の「安全神話」をふりまいてきた学者の一人のようですね。大学生のころはどんな考えだったのか知りたいものだと思いました。
原発は、今すぐ廃止の方向に動き出さないと日本全体が沈没してしまうのではありませんか。今なお原発にしがみつこうとしている人がいるのに驚くばかりです。
(2011年4月刊。1500円+税)

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー