弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2011年5月 8日

すべての生命に出会えてよかった

生き物

著者  桃井 和馬   、 出版  日本キリスト教団出版局 
 
 世界中の、140ヶ国に出かけて取材を続ける写真家による貴重な写真レポートです。
地球には、ひとつだって無駄な存在はない。すべての生命、すべての出会い、すべてはすべて連なっている。だから、無意味に死んではいけない。だから、人が人を殺してもいけない。
生きとし生けるものの躍動感がよく伝わってくる写真が続きます。そして、世界の人々の表情豊かなスナップ写真があります。白一色の凍れる世界で吹雪に耐える白鳥たちは、次に来る春をひたすら耐えて待っているようです。ぐっすり眠りこけているアシカの寝顔は、夢見るしあわせな時間をよくぞ表象しています。そして、ライオンの赤ちゃんが大人のメスライオンの群れのなかで気持ちよさそうに寝入っています。
 ツバルの少女のきらきらと光輝く瞳がとくに印象的です。未来は青年のもの。いや、未来は子どもたちのものなんです。青年、そして子どもたちの豊かな未来をきちんと保障するのは、大人とりわけ年寄り(私も当然その一員です)の責任です。子どもは、いつくしみと愛情に溢れている。ホント、そうでなければいません。
 この写真集は、フォトジャーナリストとして、世界各地で紛争を追い求めてきた著者によるものです。
 自然という、複雑で大きなメカニズムの一部として生かされている人間、そうであるなら、同じ宗教や民族の中で争うことも、宗教や民族で殺しあうのもあまりに空しい。
 自然と、生き物と、子どもたちと、そして壮年や老人の生き生きとした姿がよくも撮られています。奥の深い写真集でした。
(2010年10月刊。1800円+税)

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