弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2011年5月 2日

33人チリ落盤事故の奇跡と真実

アメリカ

著者    マヌエル・ピノ・トロ 、 出版   主婦の友社
 
 チリ鉱山で、700メートルの地底に2ヶ月以上も閉じ込められ、全員が無事に救出された状況が描写されている本です。
サンホセの鉱脈は、1889年に拓かれてから100年以上たっている。坑道は地下800メートルの深さまで、らせん状のスロープになっている。100年もの間、作業員は量りきれないほどの銅や金を採取してきた。
 落盤事故から2週間たった。33人の居場所を探すために、砂漠の地面を掘る掘機を操作していた。ドリルがふっと何かをつき抜けた感触がした。そして、かすかな衝撃があった。急いでドリルを地底から引き揚げる。ドリルを見ると、先端あたりに赤い色がついているのが見えた。地底の作業員たちがドリルに色を塗ったのだ。ドリルの中身を引き抜くと、何かくくりつけたものが出てきた。湿ったビニール袋がくっついている。しかも中に紙が入っていた。くしゃくしゃの紙に文字が書かれている。
「我々33人は、避難所にいて、生きている」
 すごい感激の一瞬でした。しかし、問題はそこから始まります。どうやって救出するか。地底の人たちが耐えられるかです。
やがて地下700メートルの深さから映像が届き、電話で会話できるようになった。地下の気温は34~35度。湿度は80%をこえる。避難所は50平方メートルの広さで50人が収容できる。酸素ボンベで、食料、水が貯蔵されていた。乾電池もライトもある。地下には人工的な昼と夜がつくりあげられた。
 地下の作業員が四六時中、救出のことばかりを考えて過ごすようなことがないように、不安材料はなるべく取り除く。地下の作業員はグループに分かれ、仕事を割り振られてシフト制で働いた。これが士気を高め、雰囲気の改善につながった。
 家族との対面は1分間。そして絶対に落ち込ませないよう、明るく穏やかな話題だけにすることという条件がついた。
アルコールは地下の作業員には差し入れなかった。集団に深刻な精神的不安定をもたらす危険があるからだ。湿度のせいで、より早く汗をかくので、外の環境と同じ方法では、アルコールは身体に吸収されない。
33人の着る服は、特殊繊維のもの。非常に優れた通気性をもち、防水性があって汗を効果的に発散できるため、皮膚を常にドライに保てた。そして、抗カビ作用もあった。
2010年10月13日、70日ぶりに地上へ生還した。救出作戦は23時間に及んだ。
すごいですね。33人もの男たちが70日間も700メートルの地底に閉じ込められ、そして全員が生還したのですからね。勇気と知恵あふれたチリの人々に拍手を送ります。
(2011年2月刊。1500円+税)

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