弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2011年4月 1日

「偽りの二大政党」

社会

著者  中西 輝政・篠原 文也、    出版 PHP研究所
 
 保守派の論客として名高い著者の対談集です。賛同できないところも多々あるのですが、そのとおりだと思うところも多いので、以下、あくまでも我田引水で紹介します。
 みんなの党の躍進も、「平成政治の大崩落」と呼ぶ“改革”現象の一つ。
マスコミの責任は大きい。国民全体がメディアに踊らされている。マスコミに踊らされて、有権者がフラストレーションの「はけ口」を探し求め、政権運営能力がない政党に分不相応な力を与えることで政党政治の基本構造を動揺させ、ついには日本の屋台骨まで崩落させてしまう。
 消費税10%にしても、民主党と自民党の両方が同じ主張をしている。年金、社会福祉政策についても、この両党はカレーライスとライスカレー程度の差しかない。
 民主党と自民党に本質的な違いしかなく、かつての自民党内の派閥の違い程度の「相違」しかないことは、昔も今も明白です。ところが、マスコミは両党を別のことを主張している政党かのような無理を押し通しています。カレーライスとライスカレーに違いなんてないのですからね。マスコミもごまかしてはいけません。
 小沢一郎の選挙手法は、どこまでも昔の自民党のやり方だ。上半身では民主党を装いながら、下半身では古い自民党のDNAを引き継いでいる。
 小選挙区制は、空気に流させやすい日本人には向かない選挙制度だ。もし政治の安定を望むのなら、小選挙区制をやめる勇気をもつべきだ。
国民のフラストレーションは議会政治の否定という議論が出てくるまでにたまっている。国会に雑多な勢力があるのは、現実の日本社会を反映した、政治にとって自然なこと。中選挙区制時代のほうが、民意が忠実に反映されて、国民の選挙結果に対する満足度も高かった。人々は、社会勢力が政治の議席数に忠実に反映されているとき、日本の民主主義が機能していると感じる。
 政治交代からわずか1年あまりで、これほど「無能」「偽善」「腐敗」をワンセットで披瀝したような党は、とうてい政権の主体になりえない。
 民主党は、いまだに政党ではなく、「選挙互助会」にすぎない。普天間飛行場の問題であれほど迷走したのも、党内に非武装中立派から、憲法改正派、そのなかには核武装派まで抱えて政策の収拾が難しかったからだ。民主党は政党の体をなしていない。民主党は選挙への執着が党員を結びつける「唯一の紐帯」になっている。
 なぜ民主党に網領がないのか。それは、政治理念や基本政策について詰めた議論をすると、党がまとまらないからだ。
 有権者のメディアでの信頼度は7割あるが、情報の信頼性は新聞が優る。ただ、影響を受けるのは、逆にテレビの影響が大きい。面白さではテレビに負けても、思考を促す奥行きの深さということになると、テレビは新聞にかなわない。
 テレビだけ見ていても、いわば洗脳されているようなもので、世の中の真相は分からないですよね。とくに福島原発事故の報道はひどいものです。テレビを見てても、さっぱり事態の真相は分かりませんよね。
 小選挙区制をやめ、みんな比例代表制にしてしまったら、日本の国会ももう少しまともに議論するようになると私は思いますし、期待しています。
 今回の東日本大震災によって民主党政権は自民党を取り込もうと必死です。似た者同士し、もともと派閥ほどの違いしかありませんので、「大連立」はありうるのでしょうね。それにしても、少数政党の言論もきちんと保障してほしいものです。国民のなかに「雑多な」意見が現にあるのですから、二大政党制は根本的におかしいと思います。
(2011年1月刊。1500円+税)

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