弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2011年3月12日

「最強のサービス」の教科書

社会

著者 内藤  耕、  出版 講談社現代新書
 
 サービスとは何か、いったい何を、どうしたらよいのかを改めて考えさせてくれる本でした。サービスの提供現場を現場で働く従業員の気合や度胸、根性に任せるべきではない。気合や度胸、根性といったものに頼っている企業は、最終的には成功も成長もできない。
単に働く人の経験や勘、スキルに頼ってサービスを提供するのではなく、顧客が求める同じ品質と内容のサービスを繰り返し提供でき、また現場で働く従業員も人間でなければ出来ない作業に専念し、肉体的な負担も蓄積もしない仕組みをバックヤードに作り込んでいる。現場で収集された顧客に関する情報を共有し、それにもとづいて組織的にサービスを提供する。これは有名な旅館「加賀屋」についての記述です。
サービス産業の現場には顧客がいて、その顧客は気まぐれで、何を求めているのかを事前に知るのは、ほとんど不可能である。そうなんですね、わがままな客を相手としつつ、そこに満足を与えるのがサービス産業の醍醐味なんですからね。
それにしても、離婚ローンなるものを提供する銀行があると知って驚きました。大垣共立銀行は慰謝料や裁判費用、財産分与資金を融資するというのです。すごい発想です。 この銀行は、また、敷地内の建物もコンビニそっくりです。前に広々とした駐車場をとり、ATMは店舗の奥に、そしてトイレはロビー側に設置しているのです。ドライブスルーATMまでもうけているというのですから、銀行も変わりましたね。
旅館「加賀屋」に私は泊まったことはありませんが、そこに立ち入ったことはあります。石川県の和倉温泉です。「加賀屋」の近くにある系列の大衆向けホテルに泊まったので、「加賀屋」をのぞきに行ったのでした。お客の満足な日本一を長年続けている旅館とは一体どんなものなのか知りたいでしょ。ミーハー気分で1階のロビーと土産品店街をウロウロしてみました。
加賀屋は宿泊客を世話することを、自ら提供する最大の商品と位置づけている。私は加賀屋の偉いところは、まずもって従業員をとても大切にしているということです。女性に優しい労働環境から、加賀屋の従業員の離職率は低い。長く働くことで従業員一人ひとりのスキルレベルがさらに高くなる。さらに、離職率が低ければ、採用や人材育成にかかるコストも低くなる。見えないところでは大いに合理化、機械化して、見えるところでのサービスの向上をはかるというのです。すごいですね。
私の事務所でも定着率はいいほうだと思いますが、労働組合(分会)があって、一年中、団交が続いています。経費の節減と事務職員の士気の向上との兼ね合いもまた難しいところがあります。
実務的大変参考になる本でした。
(2010年9月刊。720円+税)

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