弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2011年3月 9日

ランドラッシュ

社会

著者 NHK食料危機取材班、  出版 新潮社 
 
 世界的に優良農地の争奪戦がすすんでいるのですね・・・・。知りませんでした。それを知ったら、ますます日本の減反政策なんてとんでもないことだと思いました。
ウクライナに進出したイギリスのランドコム社は世界的な穀物価格の高騰を追い風に莫大な利益をあげ、農業ビジネスの成功例として注目を浴びた。この会社は、イギリス陸軍から900人近い兵士を雇って、ウクライナに連れてきた。現場には、軍人あがりの外国人経営者と、自動小銃で武装した傭兵と、まるで犯罪者のような扱いを受けて働く地元農民の姿が目につく。このイギリスの会社は既にウクライナに12万ヘクタール、これは東京都の半分にあたる土地を確保し、さらに拡大しつつある。
ウクライナでは、日本人の農家も挑戦している。青森県の人(58歳)だ。いやあ、すごいですね。単身ウクライナに乗り込み、大豆の大規模栽培に挑んでいるのです。偉いですね。でも、なかなか報われないようです。
なぜ、海外の農地を囲い込むのか。それは穀物市場システムへの信頼が崩壊してしまったから。輸入に頼っていた国々では、食糧危機が起きたときに備えて、自分たちで食料を確保しようと、おのおのが海外農地の獲得に乗り出した。これが「ランドラッシュ」だ。
世界中に広がるランドラッシュに拍車をかけているのが、将来予想される食料不足である。インド政府も海外での農地獲得を後押している。なぜか?インドは国内に広い農地をもち、食料をほぼ100%自給している。そのインドは、これから「水」の問題をかかえる。だから・・・・。それじゃあ、日本はどうしたらいいのか、考えさせられます。まずは、国内農業の保護と育成でしょう。じいちゃん・ばあちゃん農業を保護しなかったら大変なことになりますよ。切って捨ててはいけません。
ウラジオストックを含むロシア沿海地方にニュージーランドの実業家が進出している。そして、韓国の現代重工業も・・・・。初めての海外農地経営である。なぜ、韓国の企業が海外で農地経営に乗り出そうというのか。それは、韓国内の農業が死に瀕しているためだ。韓国の穀物自給率は27%。しかし、コメを除くと、実は95%を海外に依存している。そして、韓国内で農地を広げることは出来ないから、海外に農地を確保するしかない。
インドの企業がエチオピアで31万ヘクタールもの農地を獲得している。これは東京都の1.5倍の面積だ。エチオピアでは外国企業が大規模に食料を生産しているにもかかわらず、エチオピア自体は慢性的な食料不足に苦しんでいる。エチオピアには、これまでインドをはじめ5カ国が農地を確保するために進出している。これから、九州の面積の4分の3に匹敵する300万ヘクタールの土地に外国企業を受け入れる計画がある。
現在、世界は常に、北(先進国)では食料過剰、南(途上国)では食料不足の状態にある。食料は公平に分配されているわけではない。そして、そこで大きな利益を得ているのは、巨大アグリビジネスだ。肥料や農薬をつくり、農化学産業として知られるモンサント社やシンジェンタ社、穀物メジャーと呼ばれるカーギル社やADM社などがもうかっている。
こんな状況でTPP「開国」なんて、日本農業そして日本人に立ち直れないほどの大打撃を与えるだけだと思います。その問題点が十分に議論されないまま、TPPは当然だというマスコミの論調が強まっているのに、私はかつての郵政民営化のときと同じような危っかしさを感じます。いまや郵便の公共性を誰も言わなくなり、営利追求一本槍になってしまっているのではありませんか。果たすべき公共的役割を軽視してはいけません。郵便局をコンビニに置きかえても農山村に住む人々の利便と幸福の追求にはつながらないのです。
(2010年10月刊。1500円+税)

月曜日、東京に雪が降りました。重たいボタン雪でしたから積もるはずはありません。私が大学生だった40年前にも東京で3月に大雪が降りましたが、そのときは入試に影響が出るほど積もりました。
春の前には、春一番をふくめて気候が不安定になるようです。白梅が満開です。黄水仙が庭のあちこちに咲き、チューリップの咲くのも、もう間もなくとなりました。
花粉症さえなければ春は本当にいいのですが・・・。

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