弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2011年3月 7日

昆虫未来学

社会

著者  藤崎 健治 、   出版  新潮新書  
 
 フランス語のクラスで、ちょうど人類の未来の食料は昆虫だというテーマを扱っていたときに、この本を読みました。いま、日本はTPPに参加して強い農業をつくるとか言っていますが、食料自給率を維持しておかないと近い将来の日本人は大変な食糧不足に泣くことになるのは必至だと思います。そのとき、昆虫を食べればいい、なんてことにはならないのではありませんか・・・・。それはともかくとして、昆虫類を知っておくことは大切なことです。昆虫類の最大の特徴は、肢が三対、すなわち6本あること。
昆虫は赤道付近の高温多湿の環境で誕生した。系統的に昆虫にもっとも近い節足動物は、エビやカニなどの水生甲殻類である。その次は、ムカデなどの多足類だ。
昆虫種の数は100万を数え、全生物種の3分の2を占める。植物種は30万種。魚類は3万種。哺乳類は4000種である。しかも、毎年、新種の昆虫が3000種も追加されており、将来は500万種から1000万種に達する可能性がある。そうなると、地球上の全生物種の5分の4以上を占めることになる。地球が「虫の惑星」と呼ばれる所以である。
 昆虫は翅を発明して、空中という三次元の世界に進出した。昆虫のもつ開放血管系は酸素を取り込みやすいシステムであり、飛翔筋の活発な代謝のためには酸素が不可欠なのである。
ハエは、光の明滅を1秒間に300ヘルツまで感知できる。ハエは人間の10倍のスローモーションで映像を見ていることになる。
成長過程で形態を大きく変化させる変態を行うのは昆虫の大きな特徴のひとつ。完全変態の昆虫は成長のステージによって生息場所を買えることで、生息場所の悪化のリスクを分散させることができる。たとえ環境変動があっても絶滅せずに生き抜く確率が高くなる。
体サイズの小型化こそ、昆虫類の繁栄のもう一つの要因である。体サイズの小さな生物ほど、世代時間が短く、個体群の増加率が高い。
 昆虫では、全神経細胞の90%が体表の感覚細胞となっている。センサーとして働く感覚毛には、音や触覚などを感じる受容器、嗅覚や味覚の受容器、湿度や温度の受容器もある。同波数特性の異なる毛を持つことによって、空気の振動を感知し、逃避行動をとることもできる。
昆虫の不思議な能力と人間社会との関わりを知ることのできる驚きの本です。
(2010年12月刊。1200円+税)

熊本で弁護士会が主催した道州制についてのシンポジウムに参加してきました。パネリストとして熊本市長が出席していて、国保税の負担が地方自治体にとって大変になっているので、国にもっと負担してもらいたい、市の一般会計からお金をまわすのは問題だという発言をしていました。それに対して民主党の参議院議員(弁護士)が、公共下水道は一般会計で負担しているし、見直すなら全面的にすべきだとコメントしていました。
私は、福祉面では国が全面的に責任を持つべきではないかと思います。ただし、そのために清算税率の引き上げが必要だというのは短絡的です。その前に大企業の法人税率や軍事予算、大型公共工事など、取るべきところから取り、不要不急の支出は抑えるという方策が必要だと考えています。
いずれにしても、地方分権とか地域主権は福祉の充実のために必要なものだとしないと変な論議になりかねないなとシンポジウムに参加して思ったことでした。
チョコさんが元気にご活躍の様子で、安心しました。

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