弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2011年2月21日

たかがハチ、されどミツバチ

生き物

著者 桑畑純一 、出版 鉱脈社 
 団塊の世代の著者が定年過ぎてから日本ミツバチを飼い始めたのです。さてさて、うまくいくことやら…。ところがどっこい、うまくいったようです。たくさんのミツバチたちが楽しく生き生きと働いている様子が写真で伝わってきます。
 ハチの寿命は60日。人間と比べると一日を一年として働いている。60日が定年であり、還暦であり、また寿命でもある。ハチは一日たりとも無駄にはできない。
 休む間もなく一日中働いても、ハチは生き生きと楽しそうである。天気の良い日には活発に何回でも外に出かけるが、雨の日や寒い日には機嫌が悪い。ミツバチは集団で生活し、社会を構成する賢い昆虫である。
 ハチの分封。女王バチが半分の仲間を引き連れて、巣から出ていく。この一大事業も、実は女王バチが引き連れていくのではなく、働きバチが新しい女王バチにすみかを譲って出ていくことを旧女王バチに催促している。
 人間にとっての経済効率は西洋ミツバチの方が優れている。 しかし、日本ミツバチは性質がおとなしく、寒さに強く、病気にも強い。ただ、住み心地が悪いと逃亡する。できるだけ箱にさわらず、刺激を与えないのが第一。
 ハチ毒はガンの予防効果があるという。養蜂業者のガン発生率は他業種に比べてとても少ない。うひゃあ、そうなんですか。ハチに刺されても痛いだけではなくて、いいことがあるんですね。
 日本ミツバチの蜜は、西洋ミツバチとは比べものにならないくらいのに濃くて美味である。 日本ミツバチは西洋ミツバチが特定の花から蜜を集めるのに対して、百花蜜と言われるように木の花を主として何の花からでも集めてくる。昼間は蜜を集め、夜は集めたばかりの水分の多い蜜を、羽を振るわして糖度を上げる作業に従事している。
 日本ミツバチの行動範囲は2キロから3キロほど。一匹の日本ミツバチが一生に集める量は、小さじ一杯程度でしかない。
 ミツバチ社会は徹底した年功序列で、リストラもない終身雇用社会である。働きバチは生まれてから20日のあいだは幼虫、さなぎとして巣穴で暮らし、先輩働きバチの運んでくる蜜や花粉をもらって、その保護のもとに成長していく。
20日を過ぎると、巣穴から出てきて、一人前のハチの格好をしているが、すぐには巣箱から出ることはしない。まずは巣穴を掃除し、巣穴にいる赤ちゃん世話をする。そのあと蜜を倉庫に貯める倉庫係、そのあと門番の役目をする。門番は敵を見分けて、戦わなければならない。そして、ついに蜜や花粉を集める外勤となり、働きバチとして一生を終える。働きバチは一匹だけ飼ってもすぐに元気がなくなりせいぜい2、3日しか生きていけない。ハチって、あくまでも集団の中でしか生きていけない生き物なんですね。
わが家の庭にも、たくさんのミツバチがやって来ますが、日本ミツバチなのか、残念ながら見分けがつきません。でも、ミツバチが花をめぐってせっせと働いている姿は見飽きることがありません。
(2010年3月刊。952円+税)

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