弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
2011年2月 9日
戦場の街、南京
日本史
著者 松岡 環、 出版 社会評論社
1937年に日本軍が南京で大虐殺事件を引き起こしたのは歴史的な事実です。それがあたかもなかったかのように主張する日本人が今なおいるのは残念でなりません。虐殺された人が正確に30万人なのかどうか、私にはよく分かりませんが、いずれにしても何万、何十万人という罪なき人々を日本軍が次々に殺戮していったことは、多くの日本軍兵士がつけていた日誌によっても裏付けられています。
この本は、そのような日誌のいくつかを掘り起こし、中国側の記録と照合しています。
著者は、12年間に日本軍の元兵士250人以上を訪ねて歩いて証言を聞取っていったとのことです。大変な苦労があったと思います。加害者が生の事実をありのまま素直に語るとは思えないからです。
多くの日本兵士が日記をつけていました。これは学校教育の成果であると同時に、日本帝国の天皇の赤子(せきし)としての自覚を高めるための軍隊教育の成果でもあった。
家族への情愛にあふれた手紙を書く一方で、日本軍兵はいったん中国に向かうと残酷な行為を平気で行った。中国の部落に宿営するたびに食料を徴発した。徴発とは泥棒することである。
日本軍は、兵站基地を十分に計画して設置せず、戦争に直接関係のない民衆から野蛮な略奪によって膨大な軍隊を養おうとした。日本軍は村落を直過するたびに、穀物や家畜を奪い、家屋に容赦なく火を放った。
無錫に侵攻した第16師団寺兵第33連隊は許巷の村民223人を村の広場に集めて機関銃で撃ち殺し、まだ死に切れない人をふくめて死体を焼いた。1937年11月24日のことである。 日本軍の兵士たちは、中国人を殺すことに後ろめたさはなく、「考えている間もなく、とにかく殺した」と述懐する。
第16師団の中島今朝吾師団長は、「捕虜はとらぬ方針」なので、部隊の兵士たちは片っ端から元兵士や中国人を殺していった。 7、8百という数の捕虜を「処分」するのには相当に大きな壕が必要で、そんなものはなかなか見つからない。そこで、百、二百に分割して搬送し、適当な場所に連れて行って処分することにした。
「一日に第一分隊で殺した数55名。小隊で250名」
このように書かれた元兵士の日記があり、書いた本人がそれを見ながら捕虜250人は機関銃で殺したんやろうなと語っています。
さらに日本軍は、南京に残った中国人の女性に対する性暴力を働いています。その被害にあった人は7万人とみられているのです。日本軍は国際安全区のエリアにまで乱入しました。
日本軍の将接や軍幹部は下級兵士の性暴力を容認したばかりか、自らも性暴力に積極的に加担した。
「南京に入る前から、南京に入ったら女はやりたい放題、ものは取り放題じゃ、といわれておった」と元兵士は語る。
強姦、強殺が多発した原因は、決して軍紀の弛緩というものではなく、不作為の作為ともいえる日本軍全体の暗黙の容認があったということ。
このような掘り起こし作業も元兵士の高齢化によって次第に困難になっています。その意味からも貴重な本です。そのころ生きていなかったから関係ないということは許されないと思います。だって、祖父や父たちのしたことなんですから・・・。
(2009年8月刊。2200円+税)
先日開かれた法曹協議会で、刑務所内でも収容者の高齢化がすすんでいること、不況を反映して窃盗や詐欺などの財産犯が増えていることが報告されました。60歳以上の収容者の比率は平成13年に8.2%だったのが平成21年には14.3%となった。また、万引や無銭飲食などの財産犯が36%から40.5%に増えた。覚せい剤の33.6%とあわせて4分の3を財産犯と薬物犯とで占めている。
全国の刑務所の収容者は平成18年に3万3千人でピークとなって、その後は減少している。平成21年は2万8千人となり過剰収容の問題はなくなった。
私は、いまもホームレスの若者の自転車盗の担当しています。3日も食べていなかったので、自ら110番して捕まえてもらったというのです。
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