弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2011年1月25日

一見落着、再び

司法

著者 稲田 寛、    出版 中央大学出版部
 元日弁連事務総長だった著者によるエッセイです。先輩弁護士の話は、いつ聞いても(読んでも)参考になります。
 市役所の相談窓口で法律相続を受けるとき、著者は、しばらくは口をはさまずに耳を傾けるようにしているとのこと。なかなか本題に入らない人については、「途中で口をはさむようですが、今日は何を一番お聞きになりたくて見えられたのですか」と質問して、話を本題にもっていけるように誘導する。冒頭から相続内容や結論を探ろうとして質問を重ねてみると、萎縮してしまい、十分に話が聞き出せないおそれがある。うむむ、これは私にはなかなか出来ないことです。気の短い私は単刀直入、ずばり質問ことが多くて、自分でもああしまったなとか、反省することも多いのです。ただ、市役所の職員が事前に質問内容を聞きとってくれているときには、すごくはかどります。30分という制限の中で、著者のような対応をするのは、決して容易なことではありません。
著者は1994年(平成6年)に土屋公献会長の下で、日弁連事務総長に就任します。 横浜で坂本堤弁護士一家がオウム真理教によって殺害されましたが、まだ真相が究明さていないときのことです。土屋会長をはじめとする日弁連執行部は、横浜市内にあった坂本弁護士宅を訪問調査しました。私も、このとき、日弁連理事の一人として参加しました。どこにでもあるような普通のアパートの2階が坂本弁護士宅でした。その室内にオウム真理教のバッジが見つかったのですが、警察は犯人をオウム真理教ではなくて、「過激派の内ゲバ」では・・・、なんてとんでもないことを言うばかりでした。
司法試験の改革が議論されていました。このころの合格者は700人でした。丙案という、合格者の3割は3年内の受験者とするという、大変いびつな制度が試行されていたころのことです。
12月21日に日弁連は臨時総会を開きます。荒れる総会が予測され、それを心配したグループが執行部案とは別の議案である関連決議案を総会にはかったのです。今後5年間は800人の合格者とするというものでした。この関連決議案は圧倒的多数の賛成によって可決されましたが、執行部案も6対4で辛じて可決、承認されました。このときの総会を陰謀があったという本(『こんな日弁連に誰がした』)が出ていますが、この本を読んでも、この総会で陰謀があったなどとはとても思えません。私自身も、この12月21日の総会に出席していたとばかりに思っていましたが、当時の日誌をみてみると出席はしていませんでした。しかし、いずれにしても陰謀論は単なるタメにする議論にすぎず、根拠はないと私は思います。要は、現状維持ではなく大幅増員容認へ舵を切っていった(まだまだ、その後も会内では激しい抵抗が続いていましたが)総会の一つだとみるべきだと私は考えています。
大変読みやすく、しかも味わい深い内容でしたから、一気に読み通しました。
(2010年10月刊。1900円+税)

日曜日の午前中、フランス語の口頭試問を受けました。3分前に2問を知らされ、うち1問について3分間スピーチをします。今回の1問は、日本の自殺者が年に3万人をこえていることをどう考えているか、というものでしたから、迷うことなく、こちらを選択しました。といっても、フランス語で話すのですから大変です。いくつかの理由があることを話しはじめたのですが、なかなかうまくいきませんでした。そのあと、に、試験官と問答します。フラ為すでも自殺者は増えているような話が出ていました。
 この試験にむけて、朝晩、フランス語をずっと勉強しました。今回はともかく話さなければいけませんので、いくつか文章を暗唱するよう努めました。試験官の前に出ると、頭の中が真っ白になって、簡単な単語すら出てこないようになるからです。
 わずか10分間の試験なのですが、終わったときには何だか人生の重大事をやり遂げたという疲労感がありました。今回はペーパーテストの成績が悪くなかったので、恐らく最終合格していると思います……。

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