弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2010年12月14日

自殺社会から生き心地の良い社会へ

社会

 著者 清水 康之・上田 紀行、 講談社文庫 出版 
 
 日本では毎年3万人をこえる人が自殺で亡くなっています。私も前からこのことは知っていました。しかし、3万人という数が頭にあまり入ってきていませんでした。ところが、清水氏自身が東京マラソンの様子をビルの屋上から撮影した映像を見て、途中から身震いしてしまいました。東京マラソンの出場者も同じ3万人なのです。東京都心の広い道路をマラソン参加者が埋め尽くしています。もちろん、全員が異なったナンバーを表示するゼッケンをつけています。そのあふれるような人々の流れが延々と、なんと20分も続くというのです。すごい映像です。圧倒されました。ゼッケンをつけてひたむきに走っている一人ひとりに、それぞれのナンバーがついているように、自殺して亡くなった3万人一人ひとりにも、その人だけのかけがえのない人生があったはずです・・・・。
 清水氏の話を聞きながら東京マラソンで走るランナーを見ていると、なんだか泣けてきました。ああ、今の日本って、本当に生きている人を大切にしないんだなと思ってしまったことでした。
 日本に駐留するアメリカ軍への思いやり予算については、民主党政権は自民党と同じく、最優先であり、削減の対象とはしないというのです。そのくせ、中小企業対策費や福祉予算は減る一方です。とんでもない国です。それなのに、今、マスコミは、国も地方も議員を減らせ、公務員を減らせ、高すぎるから給料を引き下げろの大合唱の先頭に立っています。マスコミまで民主党と同じひどさです。もっとお互いに人間に優しくしましょうよ。
 日本の自殺者3万人は、交通事故による死者の6倍。日本の自殺率は、アメリカの2倍、イギリスやイタリアの3倍。働き盛りの40~60代の男性の自殺が全体の4割を占める。
20~30代の死因のトップが自殺であり、80歳以上も31.4と、前世代平均の25.3を大きく上回っている。
 男女比は7対3で、女性は少ないかと思うと、自殺率は男性で、世界第8位であるのに対して、日本の女性の自殺率は世界第3位と高い。いやはや、そうなんですか・・・・。
 現代日本社会において、自殺は「時代を象徴する死」であり、個人的な問題として看過できない「社会構造的な問題」なのである。自殺者3万人に対し、自死遺族は、死者の4~5倍はいる。つまり、毎年12~15万人が自殺によって家族を失い、自死遺族となっている。現在、日本全国の自死遺族は300万人もいる。
 札幌の地下鉄のホームに立つと、線路の向こう側に大きな姿鏡がある。電車への飛び込み自殺を防止するためのもの。鏡をつけておく必要がある。発作的に電車に飛び込もうとした人が、その鏡面にうつった自分の姿を見て、はっと我にかえって思いとどまることがある。うへーっ、そうなんですか。よく注意して見てみましょう。
日本の社会は、「負け組」の象徴として自殺を扱っている。日本社会の誤りは、3~40年もの永いあいだ、あまりにも勝ち続けてしまったことにある。
 今の若い人は、日本が豊かだった時代を知らずに青春時代を送ってきた。そして、ただひたすらおとなしい学生が増えている。
団塊世代についても世代論が語られていますが、こちらは納得できないと思いました。あまりにも一面的で皮相な見方なので、団塊世代の一人としてとても残念に思いました。世代間の対立をあおってほしくはありません。
それはともかくとして、いろいろ考えさせられる文庫本です。
 
(2010年3月刊。581円+税)

 冬を迎えて庭の手入れに精を出しています。芙蓉とエンゼルストランペットは根元から切り取りました(毎年のことです)。球根類が増えすぎていますので、植え替えてすっきりさせています。残っていたチューリップを植えていると、頭上にメジロの鳴き声がします。なんとハゼの実をメジロたちが群がって食べているのです。ひとしきり食べたあと、やがていなくなりました。ハゼの実をメジロが食べるなんて知りませんでした。このハゼの木は実生で自生したものです。夏前にハゼ負けで皮膚がかゆくなった、あのハゼの木です。根元から切り倒すかどうか少し迷っています。

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