弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2010年11月23日

くにおの警察官人生

司法(警察)

 著者 斉藤 邦雄、 共同文化社 出版 
 
 2004年、北海道警の裏金問題を初めに告発したのは、元警視長で元道警の釧路方面本部長でもあった原田宏治氏でした。著者は、原田氏に続いて裏帳簿を提供して告発を裏付けた弟子屈(てしかが)警察署の元次長です。まことに勇気ある人々です。心より敬意を表します。
 このお二人が趣味のサイクリングで仲間だったことは、本書を読んで初めて知りました。著者は私と同じ団塊世代です。警察学校の教官を2回も経験していますので、警察官として優秀であったことは間違いありません。
 この本は、「市民の目フォーラム北海道」のホームページにブログ「くにおの警察日記」を連載していたのを一冊の本にまとめたものですので、肩のこらない、大変読みやすい内容になっています。
 裏金づくりに加担させられ、ニセ領収書を作成した口止め料として、北見警察署に着任早々、防犯課長から毎月3千円をもらった。1973年のことである。裏金づくり、そしてその利用は古くからあり、また広い範囲で根づいていた。このことが、体験をふまえことこまかに具体的に紹介されています。
裏金を使うのは、あくまでも上層部の特権である。書類をもっともらしく作らなければならないのは、下っ端の庶務係だった。いやはや、すまじきものは宮仕え、ですよね。
 暴力団組長に捜査情報を流し、かつ暴力団組長とゴルフで遊びまくる。そんな警察官が全国優秀警察職員表彰を受けることがある。なんとなんと、そんなこともあるのですか・・・・。
 いま、新しい裏金づくりの手口がある。物品が納められていないのに納入されたことにして代金を支払い、業者にそのお金を管理させる、いわゆる「預け」。このほか、業者に事実とは異なる請求書を出させて別の物品を納入させる「差し替え」などである。民間企業を巻き込む手口は、止まるところを知らず、エスカレートする一方である。
 警察官の仕事の大変さも知ることのできる本でした。
 
(2010年8月刊。1600円+税)

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