弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2010年11月20日

ニッポンの海外旅行

日本史(近代)

 著者 山口 誠、 ちくま新書 出版 
 
 20代の海外渡航者が最多を記録したのは1996年(平成8年)であり、この年には463万人の20代が日本から海外へ飛び立った。12年後の2008年には、262万人となり、
43.4%も減少した。なかでも、20代前半の女性の減少率は5割であり、半減した。1972年(昭和47年)、日本人の海外出国者数は初めて年間100万人の大台を突破した。このとき、3.5人に1人は20代の若者であり、そのうちの女性の45%は20代だった。
 『地球の歩き方』は1976年(昭和51年)に初登場したが、そのときは文庫本サイズの非売品だった。市販されたのは1979年(昭和54年)のこと。300頁をこえる分厚い本だった。私は、今もこの本は参照しています。
 日本の観光旅行には二大特徴がある。第一に、伊勢参りのような団体旅行が主流であり続けた。第二に寺社参詣のような大義名分を掲げる旅行が主流である。なるほど、そうですね。当会でも、裁判所訪問を大義名分に掲げて海外旅行を重ねている弁護士グループがあります。
 1980年代の半ばに登場した旅行情報誌が、旅行業界の勢力図を一気に塗り替えた。1985年に495万人だった日本人の海外渡航者は5年後の1990年には、1100万人へと倍増した。平均して国民の11人に一人が毎年、海外へ旅行するようになった。多くの日本人にとって、海外旅行は一生に一度の大イベントではなくなり、国内旅行よりも安い海外旅行が語られるようになった。1990年には、大学生の3人に1人が卒業旅行で海外へ旅立った。
ところが、今やリクルートの旅行情報誌『ABロード』は2006年10月号で休刊となり、その機能をインターネット上に移した。インターネットは、「孤人旅行」を加速している。なぜか・・・・。
どこへ行っても同じような「買い・食い」体験をする、定番化した「歩かない」個人旅行は、どこでも同じことを繰り返す海外旅行でもあり、1~2回行けば飽きてしまう。
スケルトン・ツアーの一極化とカタログ型ガイドブックの躍進によって、「買い・食い」中心の孤人旅行が日本人の海外旅行の基本形となった。
「歩かない」個人旅行が主流となり、旅先の日常生活と接点を持たない孤人旅行が海外旅行の基本形となって久しい現状では、若者は魅力を感じないだろう。
「歩く」旅を改めて提起する必要があると著者は強調しています。
 この夏の私のブルゴーニュをめぐる旅は、まさに「歩く」旅でした。そのとき、いくらかフランス語を話せるのが最大の利点になりました。政治を語ったりするような難しい話はできませんが、ホテルやレストラン、そして、タクシーに乗るくらいは不自由しないのです。弁護士になって以来、36年も朝のNHKフランス語講座を聴き、年2回のフランス語検定試験を受けていますが、あきらめずにフランス語の勉強を続けていて良かったと心から思っています。
 
(2010年7月刊。780円+税)

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