弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2010年11月11日

ラオス、豊かさと「貧しさ」のあいだ

アジア

 著者 新井 綾香、 コモンズ 出版 
 
 20代の女性が日本での農業経験もないのに、ラオスの農村で米づくりにも関わった奮闘記です。たいした勇気と、その頑張りに敬服・感嘆しました。やっぱり若さというのはすごいものですね。
 ラオスは人口630万人、面積24万平方キロ。面積は日本の本州と、人口は北海道と同じくらい。ラオ族が全体の6割を占めるが、モン族やアカ族など49の少数民族がいる。
 国民一人あたりの国内総生産は859ドル(8万円)、102ドル以下で暮らす国民が7割を占める。しかし、ラオスの森は「お金のいらないマーケット」。村人の食卓にのぼるものは、森のキノコ、野生動物、昆虫、自生の野菜など。田んぼでは、米のほか、カエル、イナゴ、ウナギ、ナマズ、ドジョウ、タニシ、香味野菜など20種もの食材がとれ、村人の食生活を支えている。農村に住む世帯は、自然から手に入れるものを現金に換算すると年間280ドルに達し、世帯収入の55%を占める。
しかし、ラオスの地方で生活するのは大変厳しい現実もある。著者は、寄生虫やデング熱に何度もかかり、ストレスから、蕁麻疹や不整脈にもなった。うひゃあ、やっぱり大変なんですね・・・・。
 ラオスで米というと、もち米を指す。雨季の稲作では、化学肥料は投入されていない。ラオスの成人男性は1ヶ月に20キロの米を食べる。日本人の4倍にあたる。そして、村には、貧困層が竹の子やキノコなどの村産物を持って米と交換しに来た場合には断ってはいけないという暗黙の了解がある。なーるほど、ですね。
 村人は、一つの種類の稲だけに頼らず、生育期間の異なる複数の苗を植えている。不安定な天水依存のもとで稲作を営んできたリスク分散の知恵である。
近年になって起きた貧困をつくり出している変化の多くは、「貧困削減」の名のもとで進められている開発事業による。
 うむむ、なんということでしょう。大いなる矛盾です。巨大開発事業や投資事業から村人が得られるプラス面は限定的である。ラオスの村人は、いま、さまざまな大規模開発事業に振り回されている。
世界銀行などによる大型ダムの建設支援、中国企業によるセメント工場の建設、日本やベトナム、タイの企業による植林など、さまざまな開発事業が「貧困削減」という名目で行われている。これらの大型開発事業は、村人が長年築いてきたセーフティーネットを奪い、マイナスの影響を与える危険性が高い。うむむ、考えさせられますね。
 ラオスの農村に入り込んで、生活した体験にもとづく指摘なので、重みがあります。いろいろ考えさせてくれる、そして元気の出る本でもありました。この若さと元気を分けてもらいたいものです。
 
(2010年6月刊。1700円+税)
 庭の手入れをしようとしていると、目の前を長いものがするすると通り抜けていきます。どきっとしました。そうなんです。長さ1mほどの若々しい蛇でした。犬走りをバツが悪そうに身をよじりながら、やがてシャガの茂みに入って行きました。蛇とは長く共存関係にありますが、何度見ても身震いさせられます。もっとも、先方は先祖代々棲みついてきた場所に入り込んできた迷惑な新参者だと思っていることでしょう。
 庭にアスパラガスの株を3つ植えつけました。10年ほど収穫出来ていた株が枯れたので、新しいものを植えたのです。来春が楽しみです。

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