弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2010年11月 8日

秘境に学ぶ幸せのかたち

東南アジア

 著者 田淵 俊彦、 講談社 出版 
 
 テレビ東京の「世界秘境全集」ディレクターによる秘境体験記です。テレビ東京は開局45周年記念番組として「封印された三蔵法師の謎」を放映しましたが、その番組制作にも著者は関わっています。
すごい人です。初めて秘境を訪れたとき、著者は26歳でした。それから20年間、世界各地の秘境をめぐったのです。なんと79ヶ国ですよ。すご過ぎますよね・・・・。
 南米のアマゾン。ジャングルの民は、食べるだけ作るから保有はしない。その日に、食べる量のマンジョーカだけを畑から抜いて、ファリーニャを作る。ため置きをするという発想は彼らにはない。
 ワニは尻尾(しっぽ)の部分を食べる。分厚いウロコの下から現れたのは、雪のように真っ白な肉である。他の部位は骨と筋だけで、とても食べられたものではない。肉をざっくりと塊に切り分け、塩と黒ゴショー、酢そして最後にパプリカという唐辛子で味付けをする。それから、高温の油で一気に揚げる。鶏肉に似た弾力があって美味しい。アマゾンの貴重な贈り物である。
むひょう、ワニって、本当に美味しいのでしょうか・・・・。信じられません。
秘境の人々は、食に対する知識が驚くほど豊富である。森にいる動物や植物の生態をすべて知り尽くしている。
 チチカカ湖周辺の人々は、ツンタを土につけて食べる。ツンタとは、チチカカ湖の水にジャガイモを1ヶ月間つけて発酵させたもの。水で煮込んで戻したツンタを土につけて食べる。といっても、どの土でも食べられるというものではない。いやあ、そうでしょうよ。土を食べるなんて、ぞっとしますね。美味しいものとは、とても思えません・・・・。
 カナダのイヌイットはアザラシ狩りに関して、いろいろの決まりがある。子どもとメスは狙わない。一発で仕留めなければならない。仕留めたばかりのアザラシの口には、末期の水を注いでやる。すぐに解体してやらなければならない。これらは自分たちの命を支えてくれる動物を敬う気持ちからなる。
 アザラシの解体を始めると、初めに肝臓を取り出して食べる。生の肝臓には、ビタミンが豊富に含まれている。野菜の不足する北極圏では、ビタミン欠乏症になりやすいから、それを防ぐためだ。むかし、本多勝一の本に同じような描写がありましたね。
 中国の雲南省の山深い村には、背負い婚が残っている。略奪婚、そこから発展した背負い婚。男女が出会う機会の少ない場所ならではの結婚のかたちである。略奪婚は、式をあげる費用がないほど貧しい地域で多く行われていた。ふむふむ、なるほど、ですね。
 ブータンで修行中の少年僧は裸に毛布一枚だけをまとって眠る。どんなに寒い日であっても、袈裟を着たまま眠るのは許されない。これも修行なのである。うへーっ、ぞっとしてきます。私は寒さに弱いので、これではたまりません。
 チベットには鳥葬がある。死んだ者の家族は、死体から手足を切り離し、服を裂いて内臓を取り出し、頭蓋骨を砕く。これは、鳥が食べやすいようにということだけではない。鳥が空に舞い上がるのと同時に、死んだものの魂も天に昇ることのできるようにとの願いが込められている。外国人には見せられない儀式だが、子どもは必ず現場に立ち会わせる。人間は死と無縁では生きられない。死はいつやってくるか分からないが、やってくるのは確かだ。だから、死を恐れるべきではない。このような死に関する太古からの教えを子孫に伝授するのだ。うーん、なりほど、でも、そう言ってもですね・・・・。その情景を想像して、またそれを思い出して、夜、眠れなくなりました。といっても、実は、すぐに深い眠りに入ったのですが・・・・。
 すごい本です。秘境に生きる人々から私たち日本人はたくさん学ぶところがあると思いました。そうはいうものの、私は、こんな体験記を読むだけで十分です。とても自分自身が秘境に出かけるなんていう勇気はありません。ワニに食べられたくもありませんし・・・・。

(2010年8月刊。1700円+税)
 庭の一角にシュウメイギク(秋明菊)のクリーム色と言うよりほとんど純白の花が咲き誇っています。その隣には鹿の子斑のホトトギスの花がひっそりと咲いています。不如帰の花が咲くと秋の深まりを感じます。急に寒くなりました。この冬は寒気が例年より強くなるそうです。お互い、風邪などひかないようにしましょう。

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