弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2010年10月 9日

自衛隊という密室

社会

著者:三宅勝久、出版社:高文研

 日本の自衛隊は死者を出し続けている。死者数でもっとも深刻なのは自殺である。1994年から2008年までの15年間で、1162人もの隊員が自殺で命を落とした。一般公務員の自殺率の2倍にあたる。
 暴力事件で懲戒処分された隊員は2007年度の一年間で80人をこす。
 脱走や不正外出で処分された隊員は326人、病気で休職している隊員が500人。脱走・不正外出は脱柵(だっさく)という。2007年度の脱柵による処分は272人。ほとんど1日から1ヶ月内に見つかっているが、半年以上も行方が分からずに免職になった隊員も7人いる。
 自衛隊法施行規則57条第6項に、「部下の隊員を虐待してはならない」と定めてある。
 「死にたい奴は死ねばいい。なにがメンタルヘルスだ」
 一佐の年収は1000万円以上、退職金は4000万円。そして納入業者に役員待遇で再就職する。防衛省との契約高15社に在籍しているOBは2006年4月、475人。三菱電機に98人、三菱重工62人、日立製作所59人、川崎重工49人。
 2008年度の1年間で、防衛省と取引のある企業に再就職した制服幹部(一佐以上)は、80人。三菱電機が一番多い。
 三菱重工と防衛省との年間契約高は2700億円。三菱重工ほど、兵器でもうけてきた会社はいない。
 まさに死の商人なんですね。ちっとも、そこにメスが入らないのは不思議です。マスコミよ、しっかりして下さいな。
 日本の自衛隊のいじめ体質は、軍隊のもつ本質でしょうね。かつてのアメリカ映画『フルメタル・ジャケット』を思い出しました。新兵訓練のしごきで、殺人マシーンに仕上げられる様子がまざまざと描かれていました。それに耐えられない、まともな神経の新兵は銃口を口にくわえて、ひっそりと自死してしまうのです。
 それにしても、日本の軍需産業の実態、とりわけ防衛省幹部の天下りがまったく知らされていないのは由々しき問題です。ぜひぜひ、誰かバクロして下さい。そこにこそ壮大なムダづかいが隠されているはずです。
(2009年9月刊。1600円+税)

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー