弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2010年8月22日

古代アンデス、神殿から始まる文明

アメリカ

 著者 大貫 良夫・加藤 春建 、朝日新聞出版 
 
  古代アンデス文明の発掘調査を日本の学術調査団が50年も続けているというのです。すごいものですね。そして、地道な発掘調査のなかで金製品の副葬品を発見するなどの成果をあげています。ただ、その発掘・発見した遺跡・遺品の維持・保存には大変な苦労があるようです。現地の人々の生活との調和を図るというのは、口で言うほど易しいことではないのでしょうね・・・・。
 この本で驚いたのは、権力者が確立してから神殿がつくられたのではないという説が提唱されていることです。ちょっと逆ではないのかしらん、と思ったことでした。
 カラー写真つきで紹介されていますので、雄大な規模の遺跡であることがよく分かりす。
アンデス古代文明といっても、本当に古いのです。前2500年から前1600年前のコトシュ遺跡、前1000年から前500年のワカロマ遺跡、前800年前から前550年のクントゥル・ワシ遺跡、前1200年から前700年のパコパンパ遺跡などが紹介されています。
ちなみに、有名なナスカの地上絵は紀元前後から6世紀にかけてのものですから、かなり時代は下ります。
日本の学術調査団は、土器よりむしろ神殿に注目した。土器以上に社会発展においては神殿の役割が重要であると考えた。神殿の建設や更新、そこで執り行われる祭祀を通じて社会が動き、農耕などの生業面を逆に刺激していったと確信した。
 太陽の神殿ワカ・デル・ソルは、長さ342メートル、幅159メートル、高さ40メートル。この建造に1億4300万個の日干しレンガが用いられた。レンガに印がついている。それは、製造した村をあらわすもので、支配地域にレンガが納入を強要した証拠と考えられる。  古代アンデス文明の豊かさを知ることは、人類はかつて野蛮でしかなかったという俗説を打ち破ることにつながります。知的世界をぐーんと広げる本でした。 
(2010年2月刊。1400円+税)

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー