弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2010年8月15日

過労死・過労自殺大国ニッポン

社会

 著者 川人 博 、編書房 出版 
 
 カローシが国際的に通用する日本語だなんて困ったことですよね。カラオケなら少しばかり誇らしい気もしますが・・・・。ちなみに、カミカゼやツナミもフランス語に入り込んでいて、辞書にも載っています。これもまた、ちょっと複雑な心境です。
 過労死は年間1万人は超える。その直接的な原因は、第1に労働時間の絶対量が明らかに多いこと。日本はヨーロッパより年間500時間は長い。しかも、無給(サービス)残業まである。第2に、労働の密度が濃すぎる。ベルトコンベアーが速すぎる。第3に、経済の国際化。欧米の経済活動にあわせて日本の労働者は深夜まではたらいている。
 2003年3月、大阪高裁の裁判官(53歳)が高層マンションから飛び降り自殺した。これは過労自殺だとして、遺族は公務上災害申請した。亡くなる前の半年間は、1ヶ月の総労働時間が300時間を優に超えていた。これは、1日10時間労働を毎日休みなく続けるという状況である。うへーっ、とうてい人間らしい生活は出来ませんよね、これでは・・・・。
 29歳の外科医が自殺した労働状況もすさまじいものがあります。
 外科医は、2年間にわたって、時間外労働を常に1ヶ月100時間以上しており、200時間以上の月もあり、平均して月170時間。休日は平均して月1回、ゼロ回のこともたびたびだった。大晦日も正月も仕事漬けだった。いやはや、お医者さんって、本当に大変な仕事ですよね。ならなくて良かったと今では思っています。私も高校生のころ、一瞬、なってみようかな、なんて思ったことがあったのです。
 過労自殺が減らない主たる原因の一つが、本来なら自殺予防に力を尽くすべき財界、とくに日本経団連が事態を放置しているからだ。会長を出した金業であるトヨタでもキャノンでも、技術者が自殺して労災に認定されている。
 著者は過労死問題に早くから取り組んできた弁護士です。東大教養学部で川人ゼミを開設して東大生に人権問題を考えるきっかけを絶えず与えていることでも有名です。
 私の大学時代からの知人ですが、川人法律事務所開設15周年を記念してまとめられた本書を贈呈されましたので、紹介します。ありがとうございました。今後、ますますのご健闘を期待します。
                 (2010年6月刊。1500円+税)

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