弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2010年6月 7日

昆虫科学が拓く未来

生き物

著者:藤崎憲治・西田律夫・佐々間正幸、出版社:京都大学学術出版会

 いやあ、学者ってすごいですよね、ほとほと感心します。
 植物は害虫にかじられると、警戒信号を発します。他の植物仲間に注意を呼びかけるのです。それを化学的変化が起きると見抜き、害虫であるシロイチモジヨトウ幼虫の唾液を大量に集め、その唾液からトウモロコシに揮発成分を放出させる物質(エリシター)を単離した。
 昆虫の唾液に注目した点がユニークである。
 それはそうでしょう。チョウの幼虫の唾液なんて、ごくごくわずかなものでしかないでしょうに、それを大量に集めて化学的変化を引き起こす物質を取り出して、それが何であるか解明したというのです。たいしたものですよね。
 昆虫の食害の刺激を受けて放出される揮発成分は、事前に蓄えられていたのではなく、食害の刺激によって生合成遺伝子が活発化され、一酸化炭素から新たに合成された揮発成分が放出されたものである。動かない植物ではあるが、その細胞内では昆虫の食害により何かを感じとり、驚くべき生理的変化が起きているのである。
 うひゃあー、すごいですね・・・。
 平安時代の『堤中納言物語』には「虫めずる姫君」というのがあり、必ずしも女性一般が毛虫やイモ虫を毛嫌いしているわけではないが、勇気をもって退治してくれる男性を女性は頼もしく思うという関係はあるようだ。なーるほど、ですね・・・。
 昆虫少年を大切に育てたいという提言と実践が紹介されていますが、大賛成です。ともかく、人間より前に地球上に現れて、超能力とでもいうべき無限の能力をもつ昆虫から人間はたくさんの学ぶべきものがあります。
 昆虫は人間の100万分の1の脳細胞しか持たないが、それでも10万個の脳細胞をもっていて、飛行や餌の探知などにすばらしい知的活動を発揮している。
 昆虫は地球上で最も繁栄している動物ともいえる。アメンボがなぜ水面をすいすいと歩いていけるのかをふくめて、昆虫にまつわる秘密が次々に科学的かつ化学的に解明されています。化学式のところは飛ばし読みしましたが、それでも楽しく読めました。
 もと昆虫少年だった皆さんに一読をおすすめします。
(2009年4月刊。4800円+税)
 日曜日の夜、歩いてほたる祭りを見に行きました。ホタルより人間のほうが多いかもしれないと思うほどの混雑ぶりでした。竹を切ってロウソクをなかで灯したものを道の両側にズラリと並べてあります。フワリフワリと飛びながら明滅するホタルは、人工的な照明とあまり合いません。夢幻の境地がいささか壊された気になりました。それで、ホタルまつりとは別の場所で、じっくりホタルを見物しました。飛んできたホタルを手のひらにのせて、ふっと息を吹きかけます。

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー