弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2010年3月13日

新しい霊長類学

生き物

著者 京都大学霊長類研究所、 出版 講談社ブルーバックス

 ヒト科は4属。ヒト科チンパンジー属、ヒト科ゴリラ属、ヒト科オランウータン属、ヒト科ヒト属。ヒト科と近縁なのは、テナガザル類。テナガザルには尻尾が無い。ヒトという動物は「尻尾のない大型のサル」なのである。素早く動く必要が無ければ、長い尻尾を持っていても無用の長物である。
 ヒトとチンパンジーのDNAは98.8%まで同じである。3000万円前までさかのぼれば、人間とチンパンジーとニホンザルの共通祖先にたどりつく。サルはヒトの親戚だが、ヒトの祖先ではない。今生きているサルと過去のサルは別の動物である。現在、人にもっとも近いサルはチンパンジーと考えられるが、それでも600万年前に分岐した。
 現代人(ホモ・サピエンス)の直接の祖先は、20万年ほど前にアフリカで進化し、10~数万年前にユーラシアへ進出し、さらにオーストラリアや南北アメリカ大陸へも広がっていった。
 さらさらした汗はヒトの特徴の一つ。ヒトがかつて水生だった証拠はない。ヒトの胎児には毛が生えている時期がある。毛の少ないヒトは、外部寄生虫に取り付かれにくいので、健康状態はよく、長生きできた。
 もてるメスは子どもを持っているメス。子どもを何頭も育てたメスが発情すると、オスたちが群がる。おばあさんザルでも、もてもてになる。
 メスが好むのは、何年も見なれたオスではなく、新しいオスである。
 メスのサルは、高順位のオスの監視の目から逃れて、自分の好きなオスと逃避行する(かけおち)。
 ヒトとサルの違いをよく知ることのできる100問100答がのっている、面白い本です。

(2009年9月刊。1180円+税)

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