弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2009年10月19日

ホタルの不思議

生き物

著者 大場 信義、 出版 どうぶつ社

 初夏というより、晩春でしょうか。5月の連休(ゴールデンウィーク)が終わって間もなく、我が家から歩いて5分のところの小川に、毎年、ホタルが飛び交います。ほっとするひとときです。
 著者は企業の研究所に入り、そして中学校の教員となったあと、博物館の学芸員としてホタルの研究に専念するのでした。これもすごいですよね……。
 私が東京のような大都会ではなく、田舎で弁護士を続けているのも、歩いて5分のところでホタルの光を眺めることができることの良さに価値を見出しているからです。
 ホタルの放つ光は、次のような生化学的な酸化反応による。酵素であるルシフェラーゼとルシフェリン、ATP(アデノシン三燐酸)などの物質が混ざり、そこにマグネシウムイオン、酸素が加わると反応がすすみ、発光する。この反応は効率が非常に高く、蛍光灯などとは比較にならないほどエネルギーを光に変えている。このため、ほとんど熱を伴わないことから、冷光とも言われる。そしてホタルは発光反応を自由に制御している。
 ホタルには、せっかちな西日本型(2秒に1回発光する)と、のんびり発光する東日本型(4秒に1回発光する)がある。発光パターンだけでなく、産卵習性も異なっている。
 ゲンジボタルの幼虫は、4月の雨が降るあたたかな夜にサナギになるため、一斉に発光しながら川岸に上陸して、土に潜る。ホタルは、幼虫も光るのですね……。見たことはありませんが、なんだか夢幻的な光景です。
  西日本のゲンジボタルのメスは、100個以上の集団となって産卵する。しかし、東日本のゲンジボタルは、同じ種でありながら、集団産卵はしない。
パプア・ニューギニアにはホタルの木というのがあるそうです。オスのホタルが集まり、集団となって発光してメスを呼び寄せるのです。この木が切られてしまったら、このホタルは絶滅するだろうと予想されています。そうならないことを祈ります。
 我が家から歩いて5分のホタル出現地にも、すぐそばに新しく道路がつくられています。レジャーランドへ通じる便利な道路として開設されつつあるのです。でも、いったい、このレジャーランドが、いつまでもつのか、私には疑われてなりません。
 自然環境を孫の代にまで残したいものですよね。
 
 庭の合歓(ねむ)の木が、またふわふわとしたピンクの花を咲かせ始めました。この花を見ると、なぜかいつも子どもの頃の心のときめきを覚えます。どうしてかなと考えていると、夏祭りの提灯に描かれていた花や金魚などの鮮やかなピンクの色を連想させるからだと思い当りました。
 我が家の庭の合歓の木は小さいのですが、お隣にあるのは大きくて、慮杖を大きく広げるほどに全面に咲いて、それはそれは華やかです。
 朝、居間の雨戸を開けると、目の前に秋明菊の花が飛び込んできます。すっと高く延びた茎に、純白の花びら、そして真ん中はクリーム色になっています。気品あふれる、見るからに清々しさの伝わってくる花です。そばに紫色の斑(ふ)入りの不如帰(ほととぎす)の花も咲いています。稲刈りも間近の秋です。
 
(2009年7月刊。2200円+税)

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