弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2009年10月14日

小沢一郎、虚飾の支配者

社会

著者 松田 賢弥、 出版 講談社

 ついに政権交代が実現しました。政権が変わることによって、すべてがたちまちバラ色に変わるなんて、まったく思いません。でも、長く続いた自民党政治を、一刻も早く終わらせたいとは、大学生のころから、つまり40年間、ずっと思い続けてきました。それがようやく実現して、感無量です。
 アメリカでは一足早く、チェンジつまり変革を叫んだオバマ政権が誕生しました。どうせ同じアメリカ帝国主義じゃないか、そんな冷めた見方もあります。だけど、オバマ大統領は核廃絶を真剣に呼びかけているじゃないですか。環境問題についても、前のブッシュとは比べものにならないほどの真面目な取り組みをすすめています。イラクから撤退するという方針も評価できます。ただし、なぜ今もってアフガニスタンにこだわるのか、その点はさっぱり理解できません……。
 いいものはいいと、高く、きちんと評価する。それは、オバマ政権であれ、今度の民主党政権であれ、必要なことだと思います。無用なダム建設をやめる。後期高齢者医療制度を見直す。子ども手当を支給する。いろいろ、いいことを打ち出しています。私は、大歓迎です。教育予算を増やして、高校だけではなく、大学まで授業料も無料とし、学生には生活費も補助するというように、日本は人材(人間)育成にもっとお金をかけるべきです。ダム建設よりも、よっぽど有効なお金の使い方だと思います。
 それにしても、気になるのが、「ダーティ小沢」です。この本は、次のように叫んでいます。
政権交代の前にはすべてが許されるのか。政権交代という看板を掲げていれば、ゼネコンから巨額なカネをもらい、その金も化けた政治資金で10億円にのぼる不動産を買い集めたことに一片の釈明もしなくていいのか。
 小沢は、「やましいことは一点もない」という。果たして、本当なのか……。
 小沢にとって、権力とはカネだ。小沢にとって、政治とは自身のあくなき権力欲を満たすためのものではないのか……。
 民主党の幹事長という要職を占める小沢一郎は、今こそ国民の前で自らの疑惑について語る必要があると思います。秘書に責任をなすりつけてはいけませんよ。
 西松建設の裏金の総額は、20億円をこえる。うち、国内分が10億円、海外分が10億円。国内分は、全国の支店が下請業者から工事費を還流させたり、架空経費を計上したりする手口を使っていた。
 ところが、小沢は次のように開き直っている。
 「ゼネコンから選挙の応援を受けたり、資金提供を受けてなぜ悪いのか。応援してもらうのは、あたりまえでしょう」
 小沢一郎の政治団体は、政治資金パーティを開いて、4年間で4億円近くも集めた。ところが、そのパーティ券は、どこの誰が買ったか明らかにされていない。これではまったくのザル法ですよね。
 小沢は、陸山会の政治資金によって、1994年から都内にマンションを買い始めた。今や、10億円を超える。すべて小沢一郎名義である。
 虚飾に覆われた小沢の支配者の仮面は、いつか剥がれおちる日が来るだろう。小沢一郎の仮面が剥がれたとき、民主党も政権を手放すことになるのか、それは今のところ予測がつきません。脱ダム、脱公共工事をすすめていったら、脱小沢一郎になってしまいます。それを小沢一郎が許すのかどうか。そのせめぎあいが当分つづくのではないでしょうか。
 民主党の暗黒面、自民党と同じ利権体質の政治家が生き延びるのか、ぜひとも注目していきましょう。

 連休中に、青空の下、モズの甲高い鳴き声を聞きながら、庭にチューリップの球根をせっせと植えつけていきました。畳1枚半ほどのスペースに、200個の球根を植え付けました。スコップで一個一個掘るので、ついに親指の付け根のところに豆ができて、つぶれてしまいました。
 いま、庭には黄色いリコリス、そして同じく黄色のエンゼルストランペットが咲いています。地面の足もとにはピンクかかった白いゼフィランサスの可憐な花もあちこちで咲いています。
 空を見上げるとピンクの芙蓉もまだまだ咲いていて、そのそばを赤とんぼが悠々と飛んでいました。稲刈りも間近です。秋も深まりました。
 
(2009年7月刊。1500円+税)

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