弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2009年8月 6日

スウェーデンの税金は本当に高いのか

ヨーロッパ

著者 竹﨑 孜、 出版 あけび書房

 スウェーデンに長く住んでいる日本の大学教授の本です。スウェーデンの実情を紹介する本をたくさん書いています。
 スウェーデンでは、社会保険料が企業によって全額支払われるので、家計は税金さえ支払えば、社会保険費と固定家計費はまったく不要である。そのため、日本の家計の方が、消費力や生活力では劣ってしまう。
 スウェーデンでは酒は高い。これは税金を搾り取るためというより、過度な飲酒による病気を減らすためのもの。酒は国営会社の独占専売方式である。
 小学校では、成績表も成績をあおるものだという理由から、廃止された。宿題もない。生徒20人という少人数学級に、教員が1.5人配置されている。もちろん、税金で全部まかなわれる。高校でも給食費を含めて、家計による負担はない。そして、大学への進学率は30%。大学進学率30%といっても、社会人の大学Uターンが普通であり、高校を出たら、まずは働きながらの社会勉強を優先させるのが習慣となっていることによる。大学の学費はまったく不要。生活費のほうは、国の用意する教育資金ローンを利用する。
 スウェーデンの消費税率は最高25%で、課税対象外、6%、12%、25%というような4段階になっている。医療関係はゼロ。6%は新聞や本、12%は食料品、25%はレストランでの食事。このように、課税が国民の痛みにならないように配慮されている。
 スウェーデンの人口900万人のうち、労働人口は380万人。うち、国・県・コミューンで働く公務員が3分の1を占める。公務員の職種のうち、最大グループはコミューンの介護職。女性によって占められており、給与が最も低い。
 スウェーデンの労働者が労働組合に加入する組織率は、きわめて高い。ブルーカラーで85%、ホワイトカラーでも75%。この10年間に、わずかではあるが労組への加入率は増えた。
 医師やその他の専門職も、独自の労働組合をつくっており、51万人の加入者があり、労働者のほとんどが加入している。
 失業しても、失業手当金は賃金の80%が支給される。
 スウェーデンでは、社会は誰のためにあるのか、最優先すべきは生活なのか、経済なのかが問われている。教育・医療・介護の3分野について、スウェーデンでは、必要ならば増税してでもこの3分野を守りぬくという国民の固い意思がある。
政治は国民の意欲のあらわれ。まことにそのとおりです。日本人も投票率80%を目ざして、医療・介護・教育の3つの分野を政治の最優先課題にしないといけませんよね。来る総選挙を、そのための一里塚にしたいものです。
 
(2005年8月刊。1700円+税)

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