弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2009年5月29日

刷新!改革新長(京都市長選挙の記録)

社会

著者 中村 和雄、 出版 京都市政を刷新する会

 2008年春(2月17日)、京都市長選挙でわずか951票差で惜敗した中村和雄弁護士の選挙戦を振り返った小冊子です。ずいぶん前に贈られてきてたのですが、そのうち読もうと思ってツンドクしているうちに、今日に至りました。読み始めると、さすがに京都人はすごいと感嘆しましたので、ここに紹介します。
 951票差というのは、中村候補15万7521票、当選した門川候補15万8472票というのです。本当に、ごくごくわずかの差でした。京都市内の11の行政区のうち、4つの行政区で中村候補が勝っています。政党として中村候補を推薦したのは共産党だけです。いくら京都で共産党が強いといっても、共産党対残る全政党という構図で勝てるはずがないのに、なぜ、ここまで大接戦、僅差に持ち込んだのか、とても興味があります。
 中村弁護士が候補者活動を始めたのは、前年(2007年)5月のことです。それから、市民にはまったく無名の新人が名前を売り込んでいくのですから、大変な苦労があったことだろうと思います。
 京都弁護士会400人のなかの4割160人が中村弁護士を支持してくれたそうです。過半数に達しなかったのは残念です。弁護士の世界も変革は容易ではないのですね。
 中村候補の大健闘は、京都市政における同和行政のあまりにひどい不正の横行に対する広範な市民の怒りを前提としたものでした。京都市の職員が不公正な同和行政がらみで次々と不祥事を起こして逮捕されたりして、その実態が明るみに出て行ったことがありました。
9ヶ月間のあいだ、弁護士としての活動をほとんどしなかったようですが、中村弁護士は「とても充実した楽しい日々でした」と語っています。
 生放送のテレビ討論はやりがいがあった。まさに反対尋問の応用だった。このように語っているのは、さすがに候補者として大きく有権者を惹き付けた中村弁護士ならではの感想です。
 私も若いとき、たった一度だけですが、NHKの朝のテレビで生放送の番組に出演したことがあります。前泊して渋谷にあるNHKスタジオで出たのですが、全国に流されるというのですから、それはそれは緊張しました。
 中村弁護士は、論戦で相手候補を圧倒したので、それで勝負があったはずだけど、政治の世界では正義が必ずしもすぐには勝たない、時間がかかることもあると述べていますが、本当にそのとおりですね。でも、最近の南アメリカの動きを見ていますと、少し時間がかかっても、いずれ近いうちに日本もきっと大きく刷新、本当に変革(チェンジ)するのだと私も確信しています。
 政策・宣伝の分野に関わった人たちの座談会に目が留まりました。チラシづくりの工夫が語られています。
 一番大事にしたのは、単純に一般市場に通用するカッコイイ物を作ろうということ。見たときのストーリー性とか、単純なカッコ良さ。
 そして、中村候補がブログを自分で毎日更新したことが一番よかった。町中を「おーい中村君」と呼びかけるテープで流してまわった。
宣伝、そして、インターネットの活用がますます大切だと思いました。中身は同じでも、装いを刷新したら、さらに大きく影響力は広がっていくのです。
  
(2008年9月刊。

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