弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2009年4月15日

労働法はぼくらの味方!

司法

著者 笹山 尚人、 出版 岩波ジュニア新書

 いやあ、実によくできたテキストです。若い人たち、パートで働き、派遣切りにあって泣いている人たちにぜひぜひ読んでほしいと思いました。ストーリーがあります。それ自体も無理なく読ませます。そして、労働法がすーっと入ってきて理解できます。若手というか中堅というべきか、弁護士による数多くの実体験に基づいた、労働基本権の解説がなされています。こんな分かりやすい本が書けるなんて、とても素晴らしいことです。
 ジュニア新書ということでひっかからず、大人も弁護士も読んでほしいと思います。弁護士にとっては、どうやったら難しい権利を何も知らない人に分かりやすく伝えるか、その見本がここにあります。
 ハンバーガーショップに高校2年生の真吾君がアルバイトを始めます。自給800円です。この店で正社員なのは店長だけで、あとは全員がアルバイト。ところが、身内の不幸があっても代わりの人が見つからないからアルバイトなのに休みがとれない。店のお金がなくなったら、アルバイトをふくめて全員の連帯責任として、給料から天引きで弁償させられる。店の売り上げ不振のため、賃金カットをする。
 ひどい話ですが、現実によくある話です。これって、みんな法律違反なのです。
 パートタイム労働者に労働条件を示すときには、第一に昇給の有無、第二に賞与の有無、第三に退職金の有無を明確に告知しなければいけない。
 うへーっ、そうだったんですか。ちっとも知りませんでした。ゴメンナサイ!
 そして、店長が労働法上の管理監督者にあたるかどうかも問題となります。例の、名ばかり店長という問題点です。
 そして、派遣と業務請負の違いも説明されています。要するに、仕事をしている現場での指揮を誰から受けるかによって違ってきます。今の世の中、あまりにも脱法行為が横行しすぎです。
 労働者の権利を守る上で決定的に大切なのは、労働組合です。残念なことに、日本の労働組合の力は悲しいほどありませんね。昔、総評という存在がありましたが、今の「連合」はほとんど力がありません。派遣切りの問題でも少し動いているという程度でしかないのがとても残念です。企業内組合の連合体から来る限界ということでしょうか。
 私は、若い人たちが労働者に入って、仲間と団体行動をともにして連帯感を深めつつ、少しずつ要求実現していくという日本になってほしいと心から願っています。
 
(2009年2月刊。780円+税)

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー